ーラコフスキー調書ー 世界革命の元凶は《OHU》だった   永渕一郎訳

(解説)
 ラコフスキー調書の被告ラコフスキーは1938年のトロッキスト裁判で、ブハーリン、ルイコフ、ヤゴダ、カラハン等と共に裁判にかけられ、銃殺刑の判決を受けたが、20年の懲役刑に減刑され、強制収容所に送られ、そこで死去した事になっている。1982年の百科事典ブリタニカでは彼の事を次の様に記している。

  クリスチャン・ゲオルギュウィッチ・ラコフスキーは1873年8月13日
 ブルガリア革命家となり、次いでルーマニアにおいて社会主義の地下運動家と
 して活躍、ボリシェビキ党に入党。1890年ソフィアの大学から放校され、
 ジュネーブに行き、フランスに渡り、モンベリエで医学博士の称号を取得、イ
 ンサロフというペンネームで「イスクラ」紙、「ブラウダ」紙に執筆、190
 7年ルーマニアから追放され、ロシアに移住し、1916年逮捕、投獄される。
 1917年ボリシェビキにより釈放される。レーニンの側近となり、十月革命
 後は1919年中央執行委員会委員に選出され、ウクライナ・ソビエト社会主
 義共和国の人民委員会議長となる。しかしソビエト共和国自治活動に味方し、
 スターリンや中央集権の支持者と衝突、その結果ウクライナでの地位から追わ
 れ、1926年フランス駐在大使になる。1927年反スターリン、トロッキ
 ズムの廉で党を除名され、アストラハンに、次いでカザフスタンに流刑される。
 1934年転向し、党に復帰し、保険人民委員に任命されたが、1937年に
 免職され、スパイ、裏切者の廉で逮捕、裁判にかけられた。

 ところで取調官のガブリエル・ガブリロウィッチ・クジミンは、本名はレネ・ジュウリといい、フランスで教育を受け、モスクワでNKVD(内務人民委員会)の外国人諜報員になり、スターリンの信任を受けたフランス系ユダヤ人である。彼は云うまでもなくスターリン主義者であり、トロッキストであるラコフスキーとは、その世界観では相容れないが、時あたかも第二次世界大戦の直前であり、ドイツの対ソ侵攻の可能性を前にしてスターリン政権が危機に直面していた時だけに、ラコフスキーから聞き出したユダヤ金融資本による世界陰謀の内幕は大きなショックを与えている。尚この取調べはフランス語で行われたが、それに立会ったポーランド人医師ランドフスキーがその調書をロシア語に訳し、そのコピーを持っていた。彼がレニングラード近傍の寒村で屍体となって発見された時、その所持品の中からこれが発見され、それをスペイン内乱に参加した義勇兵が海外に持出したものである。
 

1938年1月26日
ガブリエル・ガブリロウィッチ・クジミンによる
被告クリスチャン・ゲオルギェウィッチ・ラコフスキーに関する考察
(註=取調べ官をGとし、被告をRで表記する。中見出しは訳者が付けたものである)

Gー既にルビャンカ(註、モスクワのソ連秘密警察本部にある監獄)で話合った通り、君に最後のチャンスを与えるよう要請したが、君がこの場に出席している事は、私の要請が成功した事の証左である。我々を騙さないで欲しいものだ。

R−私はそんな事はしたくないし、又、しない。

Gーまず好意ある警告をしておく。今私達に必要なのは、本当の真実だ。法廷や被告の自白の世界に出てくるような《官製的》真実ではない。・・・・ご存知の様に、この様な真実は常識的判断、西側で言われている《国家的判断》にとってのみ価値あるものである。国際政策の要請から我々はあらゆる真実・・・《本当の真実》を得さざるを得ないのだ。・・・例え裁判がどんな方法で行われても、所詮、政府や世間に報道されるものは、彼等に知っていて貰いたい事だけだ。しかし一切を知っておかなければならぬ人、つまりスターリンはこの本当の真実を知らなければならぬのだ。従って君がここで何を喋っても、それは君に不利となる事はない。君の発言は、君の罪を重くするものでなく、反対に君に有利な結果をもたらすと云う事を、君は知って置くべきだ。この時点では既に失われている自分の生命を、君は救う事が出来るかも知れぬ。これで私は言うことは皆言ったが、さてどうなるか。君は、ヒトラーのスパイで、ゲシュタポから資金を貰ったと、一切の自白しているが、本当か?

Rーその通り。

Gーそして君はヒトラーのスパイだったのか?

Rーその通り。

Gー否、ラコフスキー、真実を話してくれ。法廷の証言を言うな。

Rー私達はヒトラーのスパイではない。私達は、君やスターリンが憎むのと同じ様にヒトラーを憎んでいる。或はそれ以上かも知れぬ。これは非常に複雑な問題だが・・・。

●スパイと敗北主義

Gー君に助力するよ。・・・偶然私が知った事だが、君達トロッキストはドイツ参謀本部と連絡を持っていたというが、その通りか?

Rーその通り。

Gーいつ頃からか?

Rー正確な日時は知らぬが、トロツキー没落後間もなくだ。ヒトラーが権力をとる以前だ。

Gー確かめておこう。君はヒトラーや、或は彼の体制の私的スパイだったのか?

Rー正確に言えば、私達がスパイだったのはずっと昔の事だ。

Gー一体何の目的で?ドイツに勝利を保障し、若干のロシア領土を与える為か?

Rー否、とんでもない。

Gーつまり、単純なスパイの様に、銭の為か?

Rー銭の為だって?ドイツから1マルクだって貰ったものは誰もいない。ソ連の外務人民委員を買収するような、そんな銭はヒトラーにない。ソ連の外務人民委員はモルガンとバンダールビルトの富全部以上の予算を自由に出来るし、その銭の支出報告もする必要はない。

Gーよろしい。ではどんな理由で?

Rー素直に喋ってよいかネ。

Gー勿論だとも、私が御願いした事だ。その為に君はここに招かれたのだ。

Rーレーニンがロシアに帰る為に、ドイツから援助を受けた時、果してレーニンは崇高な目的を持っていなかったであろうか?そして、彼を非難する為に流布されている一切の侮辱的な歪曲を、真実だと受取らなければならぬだろうか?果して彼はカイゼルのスパイと言われなかっただろうか?彼と皇帝とドイツの干渉との関係、更にボリシェビキの絶滅者達をロシアに送込んだ事との彼の関係は、全く明白な事だ。

Gーその真偽は、私の質問とは無関係だ。

Rー否、終りまで言わせてくれたまえ。レーニンの活動が当初はドイツ軍の為になったのは、事実ではないのか?ちょっと待ってくれ・・・ブレスト・リトフスクで単独講和が結ばれ、ソ連の莫大な領土がドイツに譲渡された。1913年、ボリシェビキの武器として、敗北主義を唱えたのは誰だったのか?レーニンだ。ゴーリキー宛の手紙の中の彼の言葉を、私は記憶している。「オーストリアとロシアの間に戦争が起れば、それは革命にとって最も有利な事件となるが、フランツ・ヨシフとニコライがこの様な可能性を我々に提供してくれるとは、予想し難い。」ご存知のように、1905年に敗北主義を案出したいわゆるトロッキスト達は、今もなお、同じ路線、レーニンの路線を継続している。

Gー少しばかり違っているよ。ラコフスキー。ソ連で我々が今持っているのは、社会主義であって、皇帝(ツアー)ではない。

Rー君はそれを信じているのか?

Gー何をだ?

Rーソ連に社会主義が存在している事を?

Gーまさか。ソ連が社会主義国でないなんて?
 

●ソ連は社会主義国ではない

Rー私にとっては、それは名称だけの事だ。そして正に此の点に、私達は反対する真の根拠を見出しているのだ。私に同意したまえ。純理上からも、君は同意すべきだ。スターリンが否と言う権利を持っている如く、私達は理論的、合理的に諾(イエス)を言う権利を持っている。それに共産主義の勝利の為なら、敗北主義も正当化出来る以上、共産主義はスターリンのボナパルチズムによって破壊され、裏切られたと考えるものは誰でも、レーニンと同じ様に敗北主義を唱える権利を持っている(今のロシアがそれに当ると考えている!忍)。

Gーラコフスキー、思うに、君は弁証法を君流に利用して、理論的粉飾をやっているのだ。もしここに大勢人がいたら、私は明らかにこれを証明して見せるのだが・・・。よろしい。君の論拠を君の立場では唯一のものとして受入れる。しかし、それにも拘らず君の言っている事は皆、詭弁に過ぎない事を、君に証明出来ると思っているよ。しかしこれは後日に譲ろう。いつかその日が来るだろう。その時は回答する可能性を私に与えてくれ。しかし、今の所では、次の事を言っておく。君の敗北主義とソ連の敗北が、ソ連において社会主義、本当の社会主義を、或は君のいわゆるトロッキズムの復興を目的とするものであっても、指導者や幹部を殺してしまっては、敗北主義もソ連の敗北も無意味、無目的となる。敗北の結果、権力を得るものは、フェーラーかそれともファッショの皇帝かだ。そうではないかネ。

Rーそれは正しい。君の結論は、私の立場からも、お世辞なしに立派だ。

Gーよろしい。君の真心からこれを認めるなら、私達は多くの事を達成したと思う。私はスターリン主義者で、君はトロッキストだ。不可能な事を達成したのだ。私達の見解の一致点が見出されたのだ。私達二人は、現地点ではソ連を滅ぼしてはいけないということを認めている。

Rー正直なところ、私はこの様な賢い人と会う事は期待していなかった。事実、現時点乃至ここ数年間は、ソ連の敗北については考える事は出来ないし、又現段階では我々は権力を奪取出来ない以上、これを煽動してはならない。我々共産主義者は、この事に何の興味も持っていない。そう、此の点は君の意見と、全く正確に一致している。現在我々はスターリン国家の滅亡に関心を持つ事は出来ない。この国家は、色々な批判を考慮にいれなくとも、反共国家であると私は主張するものであるが、それでも、なおかつ以上の事を言っているのである。私は真心から言っている事が分るでしょう。

Gー分る。これは、私達が同意出来る唯一の道だ。君が話を続ける前に、御願いしたいのだが、私には矛盾と思われる事を、説明して欲しい。君はソ連国家は反共的だと思っているのに、なぜ現地点これを破壊しようとしないのか?そんな反共主義者がいなくなったら、君の真正共産主義復興の障碍(礙)も少なくなる。

Rーいや。そんな結論は単純過ぎるよ。スターリン的ポナバルチズムは、ナポレオン体制が革命と対立している様に、共産主義と対立しているが、それにも拘らず、ソ連は共産主義的形式と教義を保有し続けている。これは形式的共産主義で、真正共産主義ではない。従ってトロツキーの消滅が、真正共産主義を形式的共産主義に自動的に変える可能性をスターリンに与えたと同様に、スターリンの消滅は、形式的共産主義を真正共産主義に変形する可能性を我々に与えてくれる。我々に必要なのは、ほんの1時間だ。私の言う事がわかる?

Gーああ、分るよ。自分の遺産を滅ぼすものは誰もいないという、古典的真理を、君は話したのだ。結構だ。これ以外の事は、虚構だ。君は、スターリン的反共主義が存在しているという前提から出発しているが、この前提を反駁する事は容易だ。一体、ソ連には私有財産権はあるのか?個人所得、会計は存在しているか? そしてこれは何の為か? 私はこれ以上事実を引証するのは止める。

R=しかし私は形式的共産主義の存在は認めている。君が列挙したものは皆、形式に過ぎない。それ以上のものは何もない。

Gーそうだろうか?ではそれは何の為にあるのか?単なる頑迷のせいだろうか?

Rー勿論、そうではない。これは必然だ。だって歴史における唯物論的進化を回避する事は全く不可能だ。可能な事と言えば、その発展を停滞させる事だけだ。その結果何が犠牲になるかって? 進化の歴史的継承権が犠牲になる。その爲その継承権は実際上で抹殺される。しかし人類を共産主義に吸引する力に打勝つ事は至難だ。従ってその力が歪められ、自分自身に敵対させられる時、それによって発展は停滞する。より正確に言えば、永久革命の進歩が緩慢になることになる。

Gー例えば?

●真の社会主義者はトロッキストだ

Rー最も良い例がヒトラーだ。彼に必要なのは、社会主義に勝つ為の社会主義だ。これが彼の極めて反社会主義的な社会主義、ナチズムだ。スターリンに必要なのは、共産主義に勝つ為の共産主義である(これは、全くの嘘である。スターリンによって殺された無関係な民の事を考えれば、この言葉が出ない!忍)。明らかに類似している。しかしヒトラーの反社会主義とスターリンの反共産主義は、双方とも残念ながら、その希望を反して、結局において、社会主義と共産主義を建設している事になる。彼等がこれを欲しようと欲しまいと、知っていようと知っていまいと、彼等が建設している形式的社会主義と形式的共産主義は、我々共産主義者、マルクス主義者が不可避的に遺産として受取らなければならぬものだ。

Gー遺産としてだって?一体、誰が相続人なのか? だってトロッキズムは完全に清算されている。

Rー君は口でそう言っても、それを信じてはいないよ。例え何度も清算されようとも、我々共産主義者はそれを耐えていく。スターリンとその警察の長い手も、共産主義者全部には届かないよ(これは、共産主義者は宗教問題に位置づけているからです。殉死は正義だと感じているからです。しかし、完全に共産主義の中身は「家庭の崩壊」の道を考えた悪魔の法であるから、神は完全に認めるわけはない。速やかに改心する必要がある!忍)。

Gーラコフスキー、御願いだ。必要なら命令する。侮辱的な口振りは慎んで貰いたい。君は君の《外交官の身分不可侵性》を信頼しすぎている。

Rーまさか私に身分不可侵性があるなんて! 今私は何処の国の大使なのかい?

Gーとても理解し難いトロッキズムの代表者さ。もし私達がそれを名付ける事に同意すればだが。

Rー君の言うようなトロッキズムの外交官になる事は、私には出来ない。私にはトロッキズムを代表する権利は与えられていない。又私自身この役割は引受けないよ。君は私にそれを与えていない。

Gー私は今では君を信用している。君のトロッキズムに関する私の指摘を君が否定していない事を、君の利益の為に強調しておく。君との会談が順調に辷り出したと考えている。

Rー私は君の指摘を拒否出来ないよ。だってこの事は私自身が言った事だ。

Gー私達は相互協定によって、この特殊なトロッキズムの存在を確認した。そこで私にははっきりした事実を明らかにしてくれる事を君に望みたい。この事実は、この不思議な我々の意見の一致を更に検討する為に我々に必要なのだ。

Rーそう。私は君が知る必要のある事は。話す事は出来る。しかしそれも私自身のイニチアチブで話す事は出来るが、《彼等》も同じ様にいつも考えているとは言えばない。

Gーよろしい。その事は考えておく。
 

●ヒトラーの侵攻は必然か?

Rー現時点では、反対派は敗北主義やスターリンの没落には関心を持っていない。それは我々には、この為の物理的可能性がないからだという点では、私達は一致している。この点では私達は同意している。現在これは否定出来ない事実である。しかし可能な侵略者は存在している。この最も偉大なニヒリストであるヒトラーはベルマフトの恐ろしい武器を持って、地平線上至る所に姿を現している。私達がこれを欲しようと欲しまいと、ヒトラーは自分の力をソ連に敵対して用いている。ところでこの事は私達にとっては全く未知の事実である。この点、まず同意しようではないか。それとも問題は明白に提起されていると考えるかネ?

Gーそう。勿論だ。しかし私がここで言わなければならぬ事は、私にとっては未知の事実なんて存在しないという事だ。ソ連に対するヒトラーの侵攻は不可侵だと考えている。

Rーなぜだ?

Gー非常に簡単さ。彼は侵攻を制御している。又我々を攻撃したがっているからだ。ヒトラーは世界資本主義の雇人に過ぎない。

Rー危険の脅威が存在している事は、私も同意見だが、その結論とソ連に対する攻撃の不可避性との間には、大きな間隙がある。

G=我々に対する危険は、ファシズムの本質そのものが規定するものだ。ヒトラーの希望は別として、彼を援助しているのが資本主義国で、彼等は彼に軍備を許し、全て必要な経済的。戦略的基地建設を許している。これは全く明らかである。

Rー君は大変重要な事を忘れている。それはヒトラーの軍備と、彼がベルサイユ諸国から今なお受けている援助は、スターリンが敗北した場合、我々がスターリンの後継者となる事が出来る、つまり反対派がまだ存在している特別の期間において、ヒトラーに与えられている事だ。この事実は偶然の結果ないし時間的一致の結果なのだと、君は考えるかネ?
Gーベルサイユ諸国からのヒトラーに対する再軍備の奨励と反対派の存在との間には、何の関係もないと思う。ヒトラー主義の弾道はそれ自体明瞭で論理的だ。ソ連に対する攻撃は既に昔から彼の計画の一部だった。共産主義抹殺と東方への進出、これは彼の著書『吾が闘争』、ナチズムのタルムードの教義なのだ。ところが君自身が言っている如く、ソ連に対するこの脅威を、君達の敗北主義者は利用しようとした。
 

●独ソ戦争は必然ではない

Rーそう。一見すればそれは自然であり、論理的に見える。しかし真理にとっては、余りに自然的であり、余りにも論理的だ。

Gーこれを防止する為、即ちヒトラーが我々を攻撃しない様にする為には、我々はフランスとの同盟を信じなくてはならぬ事になる。しかしこれは素朴過ぎる。これは、資本主義が共産主義救済の為、資本主義を犠牲にする事に同意している事を、我々が信じる事になる。

Rー大衆の集会に適してたこんな命題を基礎にしてだけ、討論を続けるのなら、君の言う事は正しい。しかし君がもしこれを本当に信じているなら、失礼だが、私は幻滅感を味わう事になる。名高いスターリン警察は政治的にももっと充分教育されていると、私は思っていたのだが、

Gーソ連に対するヒトラーの攻撃は、国際的規模における不可避的な階級闘争と同様に、更に弁証法的必然でもある。勿論、ヒトラーと隊伍を組んでいるのは、地上の全ての資本主義だ。

Rー正直のところ、君の教科書的弁証法を知って、私はスターリン主義の政治文化については極めて否定的な意見を持ってしまった。私は君の話を聞いているが、それはまるでアインシュタインが、4次元物理学に関して学生が講義しているのを聞いているような気がするのだ。君が知っているのは初歩的マルクス主義、つまり通俗的、民衆扇動的マルクス主義だと思う。

Gーもし君の説明が余り長くならないなら、マルクス主義のこの《相対性論》を解明して貰えれば有難いが。

●通俗的マルクス主義とは何か?

Rー私は何も皮肉を言っているのではない。善意を持って言っている。君達のスターリン大学でも教えているこの初歩的マルクス主義の中には、ソ連に対するヒトラーの攻撃不可避という君の命題とは矛盾する立言がある事を、君は発見出来るだろう。又、君達はマルクス主義において主要なものは、例えば、矛盾は資本主義の不治の、宿命的疾患であるという前提だと云う事も教えられている。そうでしょう?

Gー勿論

Rーしかし、事実、我々が資本主義を非難しているのは、資本主義が経済面で不断の矛盾の中に迷い込んでいるからだ。だとすると、なぜこれが資本主義の政治面に必ず反映しなければならぬのか? そもそも政治と経済はそれ自体は、重要ではない。これは社会状態の条件ないし尺度である。しかし経済と政治に、或はその双方に一挙に影響を及して来ることになる。従って経済の中にだけ誤謬を発見し、政治の中に誤謬を発見しない事は、不合理だという事になる。君が反ソ攻撃を不可避だと考える場合、この事に注意する事が大切だ。これは極めて重要な事だ。

Gー君の意見によると、君達が当にしているものは、矛盾とブルジョアの誤謬の不可避性だけである。だからその誤謬の結果、ヒトラーのソ連侵略が阻止されると云う事になる。ラコフスキー、私はマルクス主義者だ。しかしここだけの話だが、お互いを傷つけない爲に、君に言っておくが、私はマルクスを信じているが、それでもなおソ連の存在が我々の敵の誤謬のお蔭だけによるものだとは信じない。スターリンも私の見解と同じだと思うよ。

Rーこれで、君達のマルクス主義の文化を私が疑問視する理由がはっきりするのだ。君の動機と反応は平凡な活動家と何ら違っていない。

Gーそれで、私は間違っていると思うのかネ?

Rー君の見解は、小さな行政官、官僚、大衆にとっては正しい。それは平均的闘志には相応しい。彼等はこの見解を信じ、書かれている事は何でも反復している。いいかネ、私が君に言っている事は、全く秘密なのだ。マルクス主義から君達が得ている結果は、古代の秘教から得るものと同じものである。秘教の崇拝者達が知っていなければならなかった事は、全く初歩的な、概略的な真理だけで、その真理は、彼の信仰を、つまり絶対に必要なものを、満足させるだけに必要なものであった。宗教ではこの様に行われているが、革命でもこの通りである。

●マルクス主義の秘教

Gーつまり、君は今度はフリーメーソンの変種としての秘教的マルクス主義を私に教えようというのか?

Rー否、ミステリーではない。その反対だ。私はこれを極めて判然と説明出来る。マルクス主義は、哲学的、経済的、政治的体系となる以前に、革命の陰謀である。そして、我々にとっては、革命は、絶対的真理、唯一の真理である。と云う事は、哲学、経済、政治は革命を誘発する為にのみ必要だという事である。根本的真理は主観的なものといえる。これは経済や政治の中には、更に道徳の中にも存在しない。科学的抽象の見地からすれば、革命は或いは真理でもあり、或はテロでもある。しかし革命的弁証法を信じる我々にとっては、革命は真理だけである。従って革命は、マルクスの解釈の様に、全ての革命家にとっても、真理でなくてはならない。レーニンの行動が現実に矛盾しているという非難に対して、レーニンの行動が現実に矛盾しているという非難に対して、レーニンは次の様に答えた。この言葉は、憶えているでしょう。「私はこれ(革命)が真実在であると思っている」と彼は言っている。君は、レーニンが戯言を言った等と考えてはいないでしょうネ? 否、彼にとっては、一切の真実、一切の真理は革命にのみ関するものであった。マルクスは天才(鬼才!忍)だった。彼の著述は資本主義に対する深刻な批判だけに限られていた。従って、それらの著述は研究対象に関する高度の、科学的理解の成果である。ところが、彼は最高の技巧を極めながら、自分の著述が持っているアイロニーを強調しているのである。「共産主義は勝たなければならぬ。何故なら資本が資本主義の敵となる事によって、共産主義に勝たしてくれるからである」と言っている。これはマルクスの何とも素晴しい命題である。これ以上のアイロニーがあり得るだろうか? そして彼は、人々から信じて貰う為に、資本主義と共産主義を単純に無人格化し、人間を意識的に判断する個体に換えている。彼はこれを手品師の才能でやっている。
 これは、資本家達は資本主義の所産であるという事、共産主義は資本家の生れながらの白痴性がもたらした結果である勝利を手に入れる事が出来る、もし《経済人》にこの不滅の白痴性が具有されていなかったら、資本主義の中には、マルクスが発表した矛盾は起り得ないと云うことを、資本家達に証言する為の滑稽な手法なのである。《賢い人間》を《馬鹿な人間》に変える為には、人間を最低の、動物的段階まで堕落させる事の出来る魔力が必要である(その為に、あらゆる手段で人間を姦淫の方向に導き出しているのである。その魔力が、霊体による勧誘である。だから共産主義の後ろには、悪魔の存在が介入しているのである。手段は、!忍)。資本主義の最高発展の時代に、《馬鹿な人間》タイプが出現しさえすれば、マルクスの公理《矛盾プラス時間は共産主義を建設する》が実現する。正直な所、全てこの事を知っている私達は、ルビャンカの入口にぶら下がっている肖像のようなマルクスの代表者であるという権利を主張しながらも、心の底からこみ上げてくる笑いを押殺す事が出来ないのだ。この笑いはマルクスによって私達に伝染されたものだ。それは彼のその頬鬚の中で、全ての人類を笑っているのが分るからだ。

Gーその上、君は更に尊敬されている世紀の学者を笑う事が出来るのかネ?

●革命の本当の仕掛け人

Rー君は私を嘲笑しているのか?これは驚いた。マルクスがこんなにも多くの学者達を欺く事が出来る為には、彼は彼等より高い所に立たなくてはならなかったのだ。そこで、マルクスの偉大性を全面的に判断する為には、私達は本当のマルクス、革命家マルクス、『共産党宣言』によるマルクスを観察しなければならぬ。つまりマルクスは地下運動者である。彼の時代では革命は地下に存在していたからである。革命はそれが発展し、勝利を得た事に対しては、これらの陰謀家達に恩義がある。

Gーつまり君は、共産主義の終局的勝利をもたらした、資本主義における矛盾の弁証法的過程の存在を否定しているのか?

Rーもしマルクスが、資本主義における矛盾の結果だけで、共産主義が勝利を得ると信じていたのなら、彼は自分の科学的、革命理論の何千頁にも亘って矛盾に関して論じる事はしなかっただろうよ。これは君も信じる事が出来るだろう。マルクスの真の本質的な絶対的路線は、科学的ではなく、革命的だという事だ。革命家と陰謀家は自分の勝利の秘訣を、自分の敵に決して打ち明ける事はしない。彼は決して真の情報を与える事はしないが、世論を迷わせる為の虚偽の情報なら与える。それを君達は陰謀に反対する闘争に利用しているのだ。そうではないかネ。

Gー君の主張によると、資本主義には矛盾は存在しない。そこでマルクスの矛盾論は単なる革命的、戦略的方法に過ぎない事になる。遂に私達はこんな結論に達したのだ。そうだろう? しかし我々は資本主義(初期の資本を蓄財している時の資本主義!忍)における莫大な、不断に激化していく矛盾を見ている。つまりマルクスは嘘をつきながら本当の事を言っていると云う事になる。

Rー君は独断主義のブレーキを外して、独自の発明性を自由に駆使している。危険な議論家だ。そう。その通りだ。マルクスは嘘をつきながら、本当の事を話した(利用した!忍)。彼は矛盾を、資本の経済の歴史の中で継続するものと規定し、その矛盾を《必然で不可避》のものと名付け、故意に人々を混迷させる点で、嘘をついているが、同時にこの矛盾がつくり出されるもの(人工的!忍)である事、そしてそれはその頂点に達するまで、累進的に成長し始める事を知っている点で、本当の事を言ったのである。

Gーつまりアンチテーゼがあるというのか?

Rー否、アンチテーゼ等は何もない。マルクスは戦術的理由から嘘をついているのだが、それは資本主義における矛盾の起源に関してであり、矛盾の現実に関してではない。マルクスは、矛盾がどうしてつくられたか、どうして先鋭化したが、共産主義革命の勝利を前にして、どうして資本主義的生産において無政府状態が誘発されたかを知っている。彼はこの事が起る事を知っている。何故なら矛盾を作り出していた人々を知っているからである。

Gーこれは大変奇妙な、新しい発見だ。君は資本主義が《自殺》に追込まれるその間の消息について論じているが、これはブルジョア経済学者シュマーレンバハ(註、ケルン学派を確立したドイツの経営経済学者、1873〜1955年)が規定している事である。しかし実際には、自殺は資本主義の本質でもなく、生来の法則でもない。だが、この考え方で私達がどんな結論に到達するか、知りたいものだ。

Rーまさか、君はこれを直観的に感じないかネ? マルクスの言行が如何に不一致か、気付かないかネ?彼は剰余価値が実際に存在している事とそれが蓄積されている事を立証する事によって、資本主義的矛盾の必然性と不可避性を発表している。つまり剰余価値が現実に存在している事を証明しているのだ。更に生産方法の発達が共産主義建設の爲、彼はインターナショナル、即ち改良主義的組織を作っている。この組織の目的は、階級闘争と価値の制限、出来れば価値の除去(伝統価値、今、盛んにグローバリズムを叫んでいるけれど、それは道徳的価値から来たグローバリズムではなく、伝統的社会秩序を破壊する目的の美名で使われている!忍)にある。従ってマルクスの理論に基づくインターナショナルが反革命的、反共産主義的組織になるのである。

Gーマルクスが反革命家で、反共産主義者だという所まで飛躍してきたのか?

Rー真のマルクス文化がどの様に利用されるのか、今、君達は分っている。だからこそ、論理的にも、科学的にも正確に、インターナショナルを反共的、反革命的組織だと見なす事が出来る。それは君達が事実の中に、可視的な結果以外には何も見えず、教科書の文句を固執している結果だ。マルクス主義では、言行は最高知識の厳格な原則、即ち陰謀と革命の原則に合致していると云う事を忘れた場合には、こんな不合理な結論に到達するのである。

Gー最終的結論にはいつ到達するのか?

Rーちょっと待って、経済的階級闘争は、その結果から見て、改良主義であり、従って共産主義樹立を規定する理論的前提に矛盾する。ところが本当の階級闘争は、真実の、純粋な革命的意義を持つものである。しかし再度繰返すが、一切は陰謀の原則に服従する。即ち一切の方法と目的は秘密にされなければならぬ。階級闘争の結果、価値の蓄積がなされても、それは革命運動の原理を大衆に広報する為の見せかけ、幻想である。ストライキは既に革命的動員の企図である。ストライキで誰が勝とうと負けようと無関係に、その経済的効果は無政府状態を持たらす事になる。その結果、1階級の経済状態を改善するこの方法は、経済崩壊を惹起する。ストライキの範囲や結果が例えどんなものであっても、それは常に生産を減少する。要するに、労働階級にはどうにも成らない貧困が酷くなる。これはまだ大した事でない。唯一の原因となるのは、より多く稼いで、より少なく働く事である。全く経済的に見て馬鹿々々しい話だが、我々の用語によれば、これは既に矛盾である。物価が上がれば、直ぐに取上げられる資金の高騰で目が眩んでいる民衆はこれに気付かない。そして物価を政府が抑えれば、より多く消費し、より少なく生産するという欲望の間に、またも矛盾が生じ、その結果金融インフレとなる。ストライキ、飢餓、インフレ、飢餓という悪循環が起る。

Gーストライキが資本主義的利潤の負担で起る場合は例外だ。

Rーそれは理論だ。純理論だ。実際のところ、どこの国の経済便覧でも良い。その国の貸付金と総所得の総和を、賃金を受取る人の数で割って見ると、どんな驚くべき結果が出てくるかが分る。これは反革命的事実なので、我々はこれを秘密にしなければならぬのだ。つまり、ストライキを起すことで、プロレタリアの利益を守ってやるようであるが、これは資本主義的生産を破壊する為の口実に過ぎないという事である。従ってブルジョア制度の中で対立を組織する為には、プロレタリアの間の対立が、これに付加される。これは革命の2重の武器であるが、それは自然発生するものではない。それにはリーダーと規律、何よりも大衆が愚妹である事が必要なのだ。資本主義のこれらの一切の矛盾と対立は、特に金融部門では、誰かによって組織されなければならぬ。君にはこの事が理解出来ないだろうか? 私の結論を説明する為に君に言っておくが、プロレタリア・インターナショナルの経済闘争と共に、金融インターナショナルの中でも同じ闘争が起っていると云う事だ。双方ともインフレを惹起する。両者の間の符号がはっきりしている以上、協定もある事は予想出来る事だ。マルクス自身がこの事を言っている。

●コミテルンと金融インターナショナル

Gー君はとんでもない馬鹿気た話をして、新しいパラドックスをつくるつもりじゃないだろうな。私はそんな事は考えたくもない。君はお互いに敵意を持っている二つのインターナショナル、資本主義インターナショナルと共産主義インターナショナルが存在していると示唆しているようだ。

Rー全くその通りだ。私は金融(ファイナンス)インターナショナルの事を論じる時は、コミンテルンの事も一緒に考えている。しかしコミンテルンの存在を認めるからって、両者の間に敵意があるとは考えたくない。

Gー私達が虚構と空想の為に時間を浪費する事を君が望んでいるのなら、君は間違った時間を選んでいると言わざるを得ない。

Rーまあ、それはそうとしておいて、君は私を、つまり自分の生命を救う為に夜毎空想を逞しくしていたあのアラビアン・ナイトのコールガールだとでも考えているのかネ? とんでもない。私が主題から逸脱していると君が考えるなら、それこそ間違いだ。私達が提起した目的を達成する為には、私が、《最高のマルクス主義》と称しているものを、君達が知らない事を考慮に入れて、最も重要な問題を君に教えなければならないのだ。この事はクレムリンも知らないのだ。これを承知しながら、私は黙っているわけにはいかない。話を続けてもよいかネ?

Gー続けたまえ。しかしいたずらに想像力をかきたて、それで時間稼ぎをする為に、こんな事を話すんなら、そんな楽しみは全く哀れなエピソードに終る事もあり得る。君に警告しておく。

Rー何も聞かなかった事にして、続けるよ。君は『資本論』を研究している。そこで君の機能的能力を呼び覚したいので、若干の奇妙な話を憶い出して貰いたい。マルクスがどんなに洞察力に、今では巨大工業に変っている彼の時代の英国工業に対する観察から結論を出しているか、考察して欲しい。彼は工業をどんな風に分析し、批判しているか、又工場主をどんなに穢らわしい人物にに仕立てているか。大衆の想像と同じように、君の想像の中には、人間に具像された資本主義の恐ろしい光景が生れてくる。マルクスが描写している通りの太鼓腹をして、口に葉巻煙草を加え、傲慢に町頭に労働者の妻や娘を放り出している工場主だ。そうだろう? ところが他方、問題が金銭に関する場合、マルクスは穏健で、ブルジョア的な正統的信仰を示している。金銭の問題では彼の有名な矛盾が出ていない。彼は金融は、それ自体重要なものとは考えていない。商業と貨幣流通は、呪わしい資本主義的生産の結果であり、資本主義的生産がこれらを支配し、その価値を規定している。金銭の問題ではマルクスは反動家だ。ソ連の星と同じ《五芒星の星》が全ヨーロッパに輝いているが、これは五つの光、ロスチャイルド家の五人兄弟から成立しているのを見て、君は驚くかも知れない。ロスチャイルド家の銀行には、かって全世界から集めた莫大な富がある。彼の時代の世間の想像を絶するこのような価値の莫大な蓄積に、一体なぜマルクスは注意していないのか? これは奇妙な事ではないか? 恐らくマルクスのこの奇妙な不注意は、あらゆる将来の社会革命の説明の中に現れている。民衆が都市或は国を奪取する時、彼等は銀行や銀行家に対する何か迷信的な畏怖感に襲われている。我々はこの事を是認している。王、将軍、司教、警察官、聖職者その他憎むべき特権階級の代表者等を殺し、宮殿、教会、科学機関をも掠奪し、焼き払う(如何に共産主義革命が残酷な考え方をしているのか、考えているのか自白している!忍)。それなのに、革命は常に社会的、経済的のものであっても、銀行家達の生命に対しては、これを尊敬している。その結果、銀行の壮大な建物は完全に残っている。私の情報によると、私が逮捕される以前からそうだったし、今もこれは続いている。

Gーそれはどこの話かネ?

Rースペインだ。君はこの事を知らないのか?こんな事は皆奇妙だと思わないか? 金融(ファイナンス)インターナショナルとプロレタリア・インターナショナルの奇妙な共通性に君が注目しているかどうか知らないが、私の言いたい事は、後者は前者の影(これは、プロレタリア・インターナショナルは、金融インターナショナルの影の意!忍)であり、プロレタリアの方が、金融(ファイナンス)のほうよりずっと後のものだと云う事だ。
Gーこの双方は何も共通のものを持っていないのに、君はどの点に共通性を発見しているのか?

Rー客観的には両者は同じものだ。既に証明した通り、改良主義的運動はコミンテルンと類似の物を作り出し、サンジカリズムと同様に、生産における無政府状態、インフレ、民衆の中に貧困と絶望を倍加した。金融資本も、主として金融インターナショナルであるが、意識的或は無意識的に、対立を作り出しているが、それは更に大規模なものだ。マルクスの炯眼(魔眼!忍)から隠すべくもない金融対立を、なぜマルクスが隠したのか、今となっては推察出来るのである。まして金融勢力は彼の時代では、革命にとって特別の意義を持っていたのである。

Gーそれは単なる無意識的符号で、知性、意志、協定が要求する同盟では全くないよ。

Rーまあ、いいさ、お望みなら、君の見解の上に立つ事にしよう。さて金融問題を分析し、更にどんな種類の人々が金融に参加しているか規定しよう。金銭の持つ国際的本質は誰にも明らかである。この事から、はっきりしている事は、金銭を持っており、これを蓄積している組織は、世界主義的性質を持っており、これを蓄積している組織は、世界主義的(コスモポリタン)性質を持っていると云う事である。金融(ファイナンス)とは、金銭の最高の成果であり、その重要な目的と本質である。金融(ファイナンス)インターナショナルは民族的(ナショナル)(伝統的!忍)なものは一切否定し、認めない。国家も認めない。まるで無政府のようであるが、民族国家は否定しても、自分独自の国家は建設している。この国際的国家が金銭に権力を与える。そして金銭も又異常な力を与える。
 我々が1世紀に亘って建設している我々の共産主義的超国家は、マルクスのインターナショナルの図式に基づいて建設される。この図式を分析すれば、その本質が分る。インターナショナルとそのソ連の原型の図式は純粋な権力である。二つの間の構造の間にある同一性は絶対的だ。これは運命的、不可避的なものであり、これらの作者の人格は同一である。金融資本家は、共産主義者と同様に国際的である。両者は、異なった口実の下に、ブルジョア国家を否定し、これと戦っているのである。マルクス主義が必要されるのは、ブルジョア国家を共産主義国家に変える為である。従ってマルクス主義者は国際主義者とならなければならない。金融資本家はブルジョア民族国家を否定するが、その否定はブルジョア民族国家に限られてしまう。実際上は、彼は自分をインターナショナリストと言ったりはしないが、無政府主義者、世界主義者(コスモポリタン)と称している。現段階では彼の見せかけは、この様であるが、彼が真実何者か、又何者になろうとしているのか、観察しよう。ご存知の様に、共産主義者、国際主義者と金融資本家、世界主義者の間には、明らかな共通点がある。その結果、これと同じ共通性が共産主義的インターナショナルと金融(ファイナンス)インターナショナルの間に存在している。

Gーそれは偶然の共通性で、対立している。両者の一方が自滅すれば、最もラジカルな面だけが残る。

Rー論理的関連性を保存する為に、今はこれに回答しないでおく。私は只《金銭は力なり》という根本公理を解読したおだけなのだ。今日では金銭は地球引力の中心である。同意して貰いたい。

Gー続けたまえ。ラコフスキー、お願いだ。

Rー金融インターナショナルは既に今世紀以前に、徐々に人々の魔力的護符である銭の主人公になっている。この人々は以前は神或は国家を持っていた。金融(ファイナンス)インターナショナルは科学的に見て、革命的戦略技術をも凌駕している。何故ならそれは技術でもあるし、革命でもあるからだ。今説明するが、フランス革命の叫喚と華麗さに眩惑された大衆や歴史家、彼等は王や特権階級から権力を奪取したという意識で陶酔した国民は、神秘的な、用心深い、あまり知られていない少数のグループが真の王権、魔力的、神的権力を手に入れて行くのに気付かなかった。大衆はこの権力がどうして他人によって奪取され、王制時代よりも、もっと残酷な奴隷状態におかれているかに気付かなかった。この王はその宗教的、道徳的の故に、このような残酷な権力を行使する事が出来なかった。結局最高の王権は次のような人物の道徳的、知的、コスモポリタン的性質が、この人々に権力を握る可能性を与えたのである。この人々がキリスト教徒でなく、コスモポリタン(世界主義者)であった事は、明らかである。

Gー彼はどんな神秘的力を奪取したのか?

Rー彼等は金銭を鋳造する現実の特権を握ったのである。微笑わないで。でないと君は金銭とは何か知らないのだと思うよ。私の立場に立って欲しい。君に対する私の立場は、パスツールが現われる以前に登場した医者に対して、細菌学を説明しなければならぬ医師の助手みたいなものだ。しかし君にはそんな知識がない。だからこれは忘れる事にする。我々の言葉は事物に関して間違った思想を起させる事がある。このような言葉を利用するのは、真実の、正確な観念に合致しない思想の情力のお陰である。私は、金銭と言っているのである。君の想像の中に本当の硬貨や紙幣の光景が思われるのは当然である。だが、私の言う金銭はそれではない。そんなものは現代的解釈による金銭ではない。つまり通貨というのは、時代遅れである。金銭が今持って存在していて、流通していたとしても、それは古代の伝統のお陰であり、今日の純粋に想像上の機能、つまり幻想を維持するのに便宜だからである。

Gー素晴しいパラドクッスだが、詩的でさえある。

●金融インターナショナルは革命の参謀本部だ

Rーお望みなら、素晴しいと言っても結構だが、これはパラドックスではない。君が微笑っているで分るだが、国家は今でも硬貨を作ったり、王の胸像や国章入りの貨幣を作っている。それがどうだというのだ? 国家的富を代表する大事業の為の通貨の大半、即ち金銭は、私が示唆した人々によって発行されているのである。私有権、数字、小切手、為替、値引、予算、数字と際限もなく、まるで滝のように国に氾濫する。全てこれを硬貨や貨幣と比較出来るだろうか? この硬貨、紙幣は金融力の増大していく洪水を前にしては、無力な極小のものに見える。金融家達は、微細な心理学者であり、何の困難もなく、自分の金融勢力を強大にしていく。それも大衆に理解力が欠如しているからである。金融力の色々な形態に加えて、彼等は《クレジット》マネーを作り出し、その価値を際限なく高騰させようと目論んでいる。そしてもしこれに音速を加えると、これは抽象、思想、数字、数となる。信用と信仰になる。
 さて、君はこれが理解できるか?欺瞞である。偽造貨幣だ。君に分り易くする為に、別の用語を用いれば、合法化された貨幣である。銀行、取引所、一切の世界金融システムは、アリストテレスの言の如く、反自然的スキャンダルを作り出す為の巨大な機械である。即ち金銭を殖す為に、金銭を利用する。これは正に経済的犯罪、刑法の侵犯つまり高利貸しである。彼等は法定利子を受取っていると言うが、どうしてこれを正当化したり、説明したり、又公表出来るのか、分らない。仮にこのような説明を容認し、事実を認めても、高利貸しはやっぱり高利貸しだし、それに彼が受取る利子が例え法定のものであったとしても、その高利貸しは、実在もしていない資本を捏造し、偽造している事に代りはない。銀行は生産に一定の金額を投資する。その金額は彼等が実際有っている硬貨、紙幣の額よりも、十倍も百倍も多い。《クレジット》マネーつまり偽造貨幣、捏造貨幣が、クレジットから支払われる実在資本より多い場合の事を言っているのではない。法定利子が実在資本に対してでなく、実在もしていない資本により計算される時は、その利子は実在資本からの利子を越える割合いだけ非合法的だと見なさなければならぬ。私が君に詳細に説明しているこのシステムは、偽造硬貨を利用している連中の間の量も隠されたものの1つである事に注意して欲しい。彼等の持っている富のお陰で、無限の権力を持っている人々の少数のグループを、出来たら想像したまえ。彼等は取引所の絶対独裁納得出来るだろう。君にもし十分な想像力があれば、全てこれを世界的ファクターに加乗すれば、彼の無政府的、道徳的、社会的影響力つまりは革命的影響力が分るだろう。分るか?

Gーすこしはネ。

Rー奇蹟を理解するのが困難な事は当然だ。

Gー奇蹟だって?

Rーそう、奇蹟だ。ちゃちな木製ベンチを寺院に変えてしまう事が奇蹟でなくて何だ? ところがこの様な奇蹟を世間の人は、この1世紀の間に何千回となく見ている。これは、高利貸しが腰をおろし、そこで金銭を商売にしていたその汚いベンチを、現代の都市の一角を荘厳に飾立てた現代寺院に変えてしまった例外的な奇蹟である。この現代都市は豪華な円柱と群衆を持っている。この群衆は天の神々からは何も受取らないのに、金銭の神に自分の犠牲を捧げ、持物一切をその神に与える。ところがその神は銀行の鋼鉄の金庫の中で暮しており、その神聖な使命によって、彼等の富を形而上学的無限にまでに増殖する事を約束していると、彼等は考えているのである。

Gーこれは堕落したブルジョアの新しい宗教だネ?

Rーそう。宗教だ。権力の宗教だ。

Gー君は経済の本当の詩人だ。

Rーお望みならば、芸術の対象として、あらゆる時代の最大の革命として、天才達が作り出した金融を描写する為に詩が必要だ。

Gーそれは間違った見解だよ。マルクス、特にエンゲルスがいっている金融(ファイナンス)とは、資本主義の生産制度によって規定されるものだ。

Rー全くその通りだが、それは正反対なんだ。資本主義制度が金融によって規定されるのさ。エンゲルスが別の定義を与え、それを弁護する事に努めているのは正しい。しかし、彼はそうする事によって金融がブルジョア生産を支配している事を立証しているのだ。金融こそ革命の最強の手段であり、コミンテルンは彼等の手の中にある玩具に過ぎない。これは過去もそうだったし、マルクスやエンゲルス以前でもそうであった。しかしマルクスもエンゲルスもこれを説明しなかった。というより反対に、自分の学者的才能をフルに利用し、革命の為に、真実を糊塗したのだった。二人ともこれに従っている。

Gーそれは新しい話ではない。これで私は、トロッキーが前に書いた事を思い出した。

Rー話して欲しい。

Gーコミンテルンはニューヨーク取引所に比較すれば、保守的組織だと彼は言って、革命の発明家として、大銀行を指摘しているのだ。

Rーそう、彼はこの事を小冊子で書いている。その中で英国の没落を予言している。そう彼はこの事を述べた後、こう付言している。「英国は革命の道に押してやる者は誰か?」「モスクワではなくて、ニューヨークだ」と答えている。

Gーしかしニューヨーク金融家達が革命を起したとしても、彼等はこれを無意識にやったのだと彼は主張している事を、思い出して欲しい。

Rーなぜマルクスとエンゲルスが真実を隠していたか、君にわかって貰いたい為に行った私の説明は、レフ・トロッキーに関しても同じ事なのだ。

Gー私がトロツキーを評価するのは、昔から分っていたが、彼が文学的形式で、かって知った事実について、意見を述べた事に対してだけである。これらの銀行家は皆、「彼等の革命的使命を遂行して入るが、抵抗もなく、かつ無意識の内に行っている」と、トロツキー自身が全く正しく主張している。

Rーそしてトロツキーが、この事を公表した事実があるにも拘わらず、彼等は自分の使命を遂行していたとでも言うのか? これはすこぶる奇妙な事じゃないか。なぜ彼等は自分の行動を改めなかったのか?

Gー金融家達が無意識的革命家だというのは、客観的にそう見えるのだ。それは彼等には終局的結果を見る知的能力がないという結果である。

Rー君は本当にそんな事を信じているのか? これらの天才達の間に、無意識的に行動しているものがいると君は考えているのか? 今、全世界を支配している連中を、馬鹿だとでも思っているのか? だとすると、これは酷く馬鹿々々しい矛盾だ。

Gー彼等は客観的にも、主観的にも全く意識的な革命家だと、私は言っているだけだ。

Gー銀行家達が? 君は正に狂人だよ。

Rー否、私は・・・では君はどうか? 一寸考えて見たまえ。この連中は、君や私と同じ人間だ。彼等は自分で金銭を作っているので、際限もなく金銭を自由にしている。しかしだからといって、我々は彼等の持っている自己顕示欲の限度をこの位でよいと決める事は出来ない。自己顕示は、人間に完全な満足を与える唯一のものだ。そして、権力は人間の意志に満足感を与える。この銀行家達が権力欲を何故持ってはならないだろうか? 同じ欲望が、私にも、君にもあるじゃないか?

Gーしかし、彼等は既に全世界を支配する権力を奪取していると、君は言っている。私はそう思う。だとしたら、この上彼等はそれ以外のどんな権力が必要だろう?

Rー私はもう君に言っている。完全な権力だ。スターリンの持っているのと同じ権力である。但し、それは全世界を支配する権力である。

Gースターリン的権力だが、反対の目的を持っているのかネ?

Rー権力は、もしそれが実際に絶対のものであるのなら、唯一つである。絶対という観念は複数を排除する。だからこそ、本質的に同次元のものであるコミンテルンと金融インターナショナルが志向する権力は、政治に於いて絶対となり得ない。従って今日まで共産主義国家以外に、全体主義的力を持つ別の組織が考案されなかったのである。資本主義的ブルジョア権力は、最高段階に立つものであっても、高々シーザーの権力、制限された権力である。何故なら理論的に見て、これは古代に於けるファラオやシーザーの人格の神化であり、当時の原始時代の経済条件や技術的開発が不完全だったので、人々は常に若干の個人的自由を持っていた。ところが、既に部分的ではあっても、国家や世界的国家を支配している連中は、世界的権力を要求する権利を持っているのだ。これはわかるか? 彼等がまだ達成出来ない唯一のものが、これである。

Gーこれは興味有ることだ。とうとう狂気の沙汰だ。

Rー勿論、狂気ではあるが、レーニンはスイスの屋根裏の部屋で、全世界に対する権力を夢見ていた。スターリンは流刑中シベリアの農家で同じ事を夢見た。この程度の夢ならニューヨークの摩天楼に住んでいる金持ちのほうがもっと似つかわしいと思うよ。

Gー結論を出したまえ。《彼等》とは誰なのだ?

●《彼等》とは誰か?

Rー私が《彼等》を知っていながら、ここに捕虜として坐っていると思うほど、君はナイーブではない筈だ。

Gーそれは何故だ?

Rーそれは最も簡単な理由からさ。彼等の知人だったら、その男はこんな事態に陥ちいる筈もないし、又彼等の事を君に密告する権利も無い筈だ。これは賢明な陰謀の初歩的な原則である。君はこうした規則をよく知っている筈だ。

Gーでも、君は彼等は銀行家だと言っているじゃないか?

Rー否、私はそんな事を言った事はないよ。私は常に”金融(ファイナンス)インターナショナル”について論じているのだし、問題が古人に関する場合は、《彼等》という以上の事は何も喋っていない事を思い出して欲しい。彼等の事を腹蔵なく打明ける事を君が求めるのなら、私は事実についてなら述べるとしても、彼等の名前は知らないからだ。政治的ポストについていたり、世界的銀行で働いている様な人は、《彼等》の中には一人にもいないと言っても、間違いないと思う。私が理解している限りでは、ラッパロでラーテナウ(註、ヴァルター・ラーテナウはドイツ系湯ユダヤ人で、第一次世界大戦後1922年ドイツの外相として、ラッパロでソ連との条約に調印した。ドイツの左翼的民主党政党のい組織者で、1922年6月24日右翼テロリスト達によって暗殺された)が殺害された後、彼等はその仲介者だけを表向きの政治的、金融的ポストに任命している。信用出来る人、忠誠で、充分に検証された人物を選んでいる。銀行家と政治家は、例え彼等が高いポストについており、予定計画の作製者であったとしても、単なる雇われ人に過ぎない事は、はっきりしている。

Gーそれはよく分る。又、論理的でもあるが、君が知らないというのは、話すのを回避している為だろう。私の持っている情報でも、君はこの陰謀でかなり重要な地位についており、最沢山知って筈と思うが、つまり、君は彼等の誰も知らないというのかネ?
 

●フリーメーソンとマルクス


Rーその通り。しかし、君は勿論私を信じないだろう。どう言ったら良いか、神秘的なガンジーのような性格を持った人物の事を話した事があるが、しかし一切の外面的描写は抜きにしてだった。今又私はその時の事を話す事になった。彼等は一切の俗事から抜出ている。純粋な権力を持った、いわば神秘家だ。私の言う事が君に分るかどうかは知らない。彼等の住所と名前については、私は知らない。ソ連を支配していながら、石の壁に囲まれてはいない。その周囲には誰もいない。そして、どんな市民とも同じ程度の生命の保証しか持っていないスターリンを想像して欲しい。どうして彼は彼の生命を狙う暗殺から身を守る事が出来るのか? このような神秘的な人物は彼の権力がどんなものであっても、陰謀者だし、匿名者である(この計画者は、ベーエルデ星のダビデ・カンタルーネ霊体である。只、悪魔ダビデがどこまで異星人と繋がっているのかは自分では分らない!忍)。

Gー君の言う事は皆、理に適っているが、それでも私は君を信じないよ。

Rーでも信じて欲しい。私は何も知らないんだ。そりゃ知っていれば、幸いだと思うよ。その時には、ここに坐っていて、自分の生命を助ける事に心を労する事も無い筈だ。君の疑いは尤もだ。君は警察だ。この連中の事を是非知る必要がある。私は君を尊敬している。これは皆、私達がここに集っている。その目的の為にも必要だ。だからこそ、知っている事は、皆喋っているのだ。君は歴史には書かれていないが、我々にだけ分っている事、つまり最初の共産主義インターナショナルの創立者がアダム・ヴァイスハウプト(註、1776年、ババリアのインゴルタットで啓明結社を創立した)であった事を知っているかい? これは秘密にされている。彼の名前を憶えているか? 彼は啓明結社(イルミナット)(註、ドイツの宗教的・共和政治的結社で、そのメンバーの中には多くのフリーメーソン会員がいた)の首領であった。この名称はこの時代の2番目の反キリスト教的陰謀、グノーシス主義から借用したものである。彼は革命家で、フランス革命を予見し、事前にその勝利を保障したユダヤ人で元イエズス会士であった。彼は自分で、或は誰かの命令によって(ある人々は、彼の指揮者ドイツ系ユダヤ人哲学者モーゼス・メンデルゾーンだと言っている)秘密組織を作った。この組織は、共産主義を樹立する目的で、フランス革命に変える為、革命の政治的目標を遥かに越えて、フランス革命を煽動し。推進していった。この英雄的時代では、共産主義を目的に掲げる事は非常に危険であった。その為に啓明結社(イルユミナット)は全て地下に潜った用心深さと秘密があったのである。投獄されたり、断頭台に登る危険がなくなり、共産主義者を名乗る事が出来るまでには、百年以上かかっている。これは十分周知の事だ。分らない事は、ヴァイスハウプトと彼の仲間達の初代ロスチャイルドとの関係である。最も有名な銀行家達の持つ富の源泉を包んでいる秘密を説明出来るものは、彼等が最初の共産主義インターナショナルの会計を担当していたと云う事である。五人の兄弟がヨーロッパで金融帝国の五つの地区を作り、巨大な富の募集の為に、これを援助したという証拠もある。彼等は全ヨーロッパに拡がっているババリアのカタコンブ出身の最初の共産主義者であったと云う事は、あり得る事だ。ところがある者は次の様に言っている。彼等の言う理由が勝っていると私は思っている。それはロスチャイルドは会計担当者ではなくて、実は秘密の共産主義の首領だったという説である。この見解は周知の事実に基づくもので、マルクスと第一インターナショナルの最高指導者達は、その中にはゲルツェンやハイネも加わっているが、ライオネル・ロスチャイルド男爵(註、1808〜79年)の統制下にあった。ユダヤ人の英国首相ディスレーリが描いた彼の革命的風貌は、我々に伝わっているが、ディスレーリは彼(ライオネル・ロスチャイルド男爵)を、”スパイ、炭焼党(註、カルボナリ党)員、フリーメーソン、秘密のユダヤ人、ジプシー、諸々の革命家達を知っており、彼等を《指導》していた億万長者”として描写している。全てこれはお伽話のように思われる。ディスレーリはロスチャイルドを《シドニイ》と呼んでいた。しかしこのシドニイはロスチャイルドの息子ナタンの理想化した肖像である事が証明されている。彼はゲルツェンの思想を支持し、皇帝に反対する運動を起し、勝利を得ている。もしこれらの事件に照して、我々が予想出来る全ての事が正しいとすれば、資本蓄積と無政府状態を創出するこの恐ろしい機械(共産主義)を誰が発明したか、金融インターナショナルとは何かを規定出来ると、私は考えている。彼こそ革命的インターナショナルを作った当人だと思う。プロレタリアにストライキをやらせ、絶望感の種を蒔き、同時に、プロレタリアを革命に巻込む為に、プロレタリアを団結させる組織を作る為の最高級の武器を、資本主義の援助の下に建設すると言った事は、将に天才(鬼才!忍)の行動だと思う(その前に、貨幣の量を調整して、景気の変動を自由に扱う事を考えている。マイアー・アムシェル・ロスチャイルド(1743〜1812)の有名な言葉「私が一国の通貨を支配出来れば、法律等は度外視出来よう」残している。要するに、景気変動を自由に扱いたいとの願望が見え隠れている!忍)。これは歴史に素晴しい章を書き入れる事だ。否、それ以上だ。ロスチャイルドの五人の兄弟の母の言葉を記憶しているでしょう。「もし私の息子達が望まないなら、戦争は起らない」。これは仲介者という代理人がいる事、そして彼等は、皇帝ではないが、”戦争と平和の主人公”であると云う事である。この宇宙的重要性を持つ事実を君は想像出来るか? 戦争は今では革命的機能となっているのではないのか? 戦争はコンミューンだ。その時以来、戦争は共産主義への巨大な歩みである。まるで何か神秘的な力がレーニンの希望を果してくれたのである。この事に関して、レーニンはゴーリキーに話している。1905年と1914年の事だ。共産主義の三つの槓桿の内二つは、プロレタリアの統制になかったし、統制されるものではなかった。戦争は起らなかったし、第三インターナショナルによっても、ソ連によっても戦争はコントロールされなかった。何故ならこれらは当時はまだ存在していなかったからである。亡命中のボリシェビキの小さなグループも、戦争を望みながら、戦争を挑発する事は出来なかった。これははっきりしている。インターナショナルとソ連は莫大な資本を蓄積も造出する事も出来なかった。食糧の莫大なストックを飢えている人に与える代りに、又ラーテナウが言った如く、「世界の半分が肥料を作り、他の半分がこれを利用出来るようにする」代りに、これを焼却してしまうような無政府状態を造出する事は出来なかった(これは、明らかに飢餓地獄を作る願望を表している。実際には、スターリンの時のウクライナ虐殺が行われている!忍)。そしてこの様な状況下で、果してプロレタリアは、これは等比級數で増大していくインフレや、貨幣の無価値化、生産物の不断の増加、実在貨幣でない、金融資本の増加によって惹起されたものであるとか、革命の敵である中産階級が徐々にプロレタリアに変っていくとか、信じる事が出来るであろうか? プロレタリアは経済乃至戦争の槓桿を制御できないが、彼は第三の槓桿を持っている。それは資本主義国の力に決定的打撃を与え、これに打勝つ事が出来る唯一の明白な根幹である。但し、《彼等》がこれをプロレタリアに許した場合に限り、プロレタリアは資本主義国を奪取出来る。

Gー再度君に繰返して言うが、君がその文字的形式で表現している一切は、一つの名称を持っている。これについては、際限のない対談の時に、私達が既に述べている。その名称とは資本主義本来の矛盾である。そこで君の主張している如く、プロレタリア以外に、何か第三者の意志と活動が存在しているのなら、これについて最具体的な資料を与えて欲しい。
 
 

●金融インターナショナルとトロツキー

Rー君に必要なのは、それだけか? 宜しい。1つの事件を聞いてくれたまえ。日露戦争の時、《彼等》は外向的に皇帝(ツァリ)を孤立化させ、米国は日本に金融援助を与えた。正確に言えば、ヤコブ・シフ即ちロスチャイルド家一統のクーン・ローブ会社の社長を通じて行われた。シフはロスチャイルド家出身である。彼は絶大な力を持っており、アジアに利害関係を持っている米国に対して、当時、日本帝国建国を支援させた。日本人は外人を憎んでおり、同じ様な感情がヨーロッパにも発生していたが・・・。捕虜収容所から充分に教育された革命分子がペトログラードに帰って来た。彼等は日本の許可を得て、クーン・ローブ会社に融資している人々を介して米国から出発した。日露戦争は、皇帝の軍隊の組織的敗北で終結した。そのお陰で1905年の革命が勃発した。この革命は時期尚早であったが、殆ど成功した。敗北はしたが、1917年の為の必要な政治的条件を準備した。話は最続けよう。君はトロツキー(註、ユダヤ名リョフ・ダビッドウィッチ・プロンシュタイン)の微歴を読んだ事があるか? 彼の第1期の革命時代を想起して欲しい。彼はまだ青年だった。シベリアから逃亡してから、しばらくの間、ロンドン、パリ、スイスで亡命者達の間に暮していた。レーニン、プレハーノフ、マルトフ達は彼を有望な新人と認めていた。しかし既に第一回の分裂の時、彼は独立して、調停者として登場しようと努力している。1905年、25歳の時、彼は党を持たず、自分の組織も持たず、ロシアに単独で帰る。スターリンが修正を施していない、1905年の革命資料を読んで見たまえ。それはトロッキストではなかった。ルナチャルスキーの書いたものである。トロツキーは革命の時はペトログラードでは第一人者である。これは実際その通りだった。以前にもまして好評と影響力を持って、彼は革命から栄達した。レーニンも、マルトフも、プレハーノフも人気を獲得してはいない。彼等はせいぜい昔日の人気を保つだけか、或は多少失っていた。どうして無名のトロツキーが出現するや、忽ちにして、有力な古参の革命家達を凌いで、大きな権力を獲得したのか? 極めて簡単である。彼は結婚していた。彼の妻ナターリヤ・イワノヴナ・セドワは彼と一緒にロシアにやって来た。彼女が何者か知っているか? 彼女はジボトフスキーと一緒に働いており、ワールブルグやヤコブ・シフ、即ち1905年革命に資金援助をした金融グループの親類達と関係を持っていた。これがトロツキーが革命名簿の中で1位に躍進した理由である。そこで彼の性格の概略にふれて見よう。1914年に立帰って見よう。サラエボでフェルジナンド大公を暗殺した人々の背後にはトロツキーが存在している。そしてこの暗殺がヨーロッパ戦争を惹起したのである。暗殺と戦争が単なる符号だと、君は考えるか? あるシオニスト大会でメリチェット卿がこれを言っているが、《符号ではない》という見地からロシアに於ける軍事行動の発展を分析して見給え。《敗北主義》が正確な定義となる。同盟国側は皇帝を援助したが、それも同盟国側の大使には皇帝と争論し、皇帝の親しみ易さを利用し、次々と皇帝に自殺的決定を慫慂するような権限を与えるようなものであった。ロシアの肉弾は莫大であったが、無限のものではなかった。一連の組織された敗北は革命をもたらした。脅威が全面的に現れた時、それからの救済は、民主主義的共和国(今の日本国家!忍)、レーニンのいわゆる《大使的共和国》つまり革命家達を脅かさない政府を建設する事であるとされた。しかしこれは全てではない。ケレンスキーはより大きな流血を代償として、脅威を深刻化する事を煽動する役目になったのだ。これを行った結果、国を共産主義に譲渡したのである。トロツキーは今や《隠密裡に》全国家機関を奪取する可能性を受取った。何という不合理だ! でもこれが、賛美される十月革命の実相だ。ポリシェビキは《彼等》が与えたものを受取ったのである。

Gーケレンスキーはレーニンの協力者だったとでも言うのか?

Rーレーニンではなく、トロツキーだ。いや、《彼等》の協力者と言うほうが正しい。

Gー馬鹿〃〃しい!

Rー君はこれが分らぬか? これは驚いた。仮にもし君がスパイでありながら、これを隠して敵の要塞司令官になったとする。果して君は、君が仕えている攻撃者の為に、門を開かないだろうか? 敗北した捕虜にならぬだろうか? 敗北に過ぎない事を知らない攻撃者が、君を殺すかも知れない攻撃にあった時、果して君は安全だろうか? 私の云う事を信じたまえ。レーニンには称号や廟はあるが、それにも拘らず、共産主義はレーニン以上にケレンスキーに恩義がある。

Gーケレンスキーは意識的な、自発的な敗北主義だったと言いたいのか?
 

●十月革命は金融インターナショナルの陰謀だ

Rー私にはこれは全く明らかだ。但し、私個人はこれには参加していない。話を続けよう。十月革命の資金援助をしたのは誰か、君は知っているか? 《彼等》が、1905年に日本に資金援助した銀行家を介して、革命に資金を与えた。つまりヤコブ・シフとワールブルグ兄弟だ。連邦準備銀行のメンバーである五つの銀行の1つを介して、又クーン・ローブ会社の投資銀行を介して、全ての星座が資金援助をした。同様にグケンハイム、ハナワー、 ブレイツング、 アシバーグ、 ストックホルムにいて、資金の受渡しに参加していた。トロツキーが到着するまでは、私は革命家達の仲介者を勤めていた。ついにトロツキーが到達した。私が強調しなければならぬ事は、同盟国側は彼を、敗北主義者として、フランスから追出したという事である。そして、同盟国はトロツキーが同盟国ロシアで敗北主義運動を指導出来るように彼を釈放したのである。彼の世話をしたのは誰か? レーニンのドイツ通過を援助した同じ人々である。 そう、《彼等》が敗北主義者トロツキーをカナダの収容所から救出し、同盟国の国境を自由に通り抜ける可能性を彼に与えて、英国に派遣し、ついでロシアに送ったのである。《彼等》の中の別の連中、例えばラーテナウは敵国ドイツを通過してレーニンが旅行出来るように斡旋した。もし君が革命と内乱の歴史を、先入観なしに知り、君がしばしば用いている問題提起の能力を全て利用するならば、その時初めて、君は全般印象を構成し、個々のデータを、お伽話のようなものまで含めて、研究し、《興味有るチャンス》のシリーズを知る事になる。

Gーよろしい。何もかもが成功の結果ではないという仮説は認めよう。どんな結論、実際的な結果を君は持っているのか?

Rーこの短い歴史を最後まで聞いてくれたまえ。それから結論を出そう。トロツキーがペトログラードに到着した後、レーニンは彼を公然と受け容れた。君がよく知っている通り、二つの革命の間の中断時期には、二人の間には意見の深刻な相違があった。しかしここでは一切が忘れられ、トロツキーは、スターリンにはこれが気に入ろうといるまいと、革命の勝利の時代では自分の事業を知っているものとして、処遇される。それは何故か?
この秘密はレーニンの妻ナジェージダ・コンスタンチノーヴナ・クループスカヤ(註、ユダヤ人女性)が持っている。彼女はトロツキーが何者であるか、よく知っていた。彼女がレーニンにトロツキーを受け容れるよう強く勧めたのである。もしレーニンがトロツキーを受け容れる事を拒否したら、レーニンはスイスに止る事になったであろう。これが彼にとっては、トロツキーを受け容れた重要な理由の1つであった。その他レーニンは、トロツキーが資金を調達し、莫大な国際的援助を組織した事を知っていた。証拠は《封印された列車》である。更に鉄のような決断力を持って、小さなポリシェビキ党と全ての左翼革命党員、無政府党員を結束させたのはトロツキーであり、レーニンではない。《政党を持たぬ》トロツキーの本当の党は、ユダヤ人プロレタリアの古い《ブンド》(註、ユダヤ人労働総同盟)であった。この《ブンド》から全てのモスクワの革命的支流とその指導者の90%が生れている。最もそれは形式上の《ブンド》でなく、”ブンドの秘密指導部”である。この指導はあらゆる社会主義政党に滲透しており、その政党のリーダーは、《ブンド》に制御されていた。

Gーそしてケレンスキーも同じか?

Rーそう、ケレンスキーも、同じ様に社会主義者でないリーダーやブルジョア政治的分派のリーダーもそうだ。

Gー一体どうしてそうなるのだ?
 

●フリーメーソンの秘密

Rー民主主義的ブルジョア革命の初期におけるフリーメーソンの役割の事を、君は忘れているのか?

Gーまさか彼等も《ブンド》によってコントロールされていたのだろうか?

Rー当然、下級段階ではあるが、《ブンド》に服従していた。

Gー彼等の生命と特権を脅やかすマルクス主義が成長してはいても?

Rーそれにも拘らずだ。彼等にこの危険が分らなかったのは明瞭だ。メーソンは誰も、現実に存在しているもの以上の事を、自分の想像の中で見たり、表象する事を期待していた。何故なら望ましい事を空想していたからだ。この事を注目して欲しい。彼等の持っている組織の政治力を立証する爲に、彼等が腐心した事は、彼等のメンバーが殖え続けている一方で、メーソンが政府やブルジョア国民の上流社会に入っていく事だった。この時代は、非常に稀な例外はあるが、同盟国の全ての支配者は表権を持っているという誇りとなっていた。革命はフランス型のブルジョア共和国の限度まで到達しなければならぬと、彼等は信じていた。

Gーロシアで1917年時代に、こんな事を信じる人は、非常に素朴な人間に限る。

Rー彼等はそんな連中だった。メーソンはその中で彼等が大きな役割を演じた大フランス革命の最初の教訓から、何も学び取らなかった。革命は、オルレアン・ロッジのグランド・マスターであったルイ16世をはじめ、ジロンド党員、ジャコバン党員その他メーソンの大部分を抹殺した。彼等の内の誰かが生き残ったとしても、それはブリュメール(蜜月)18日のお蔭だけであった。

Gーメーソンの助力で権力を取った革命家達の手によって、メーソンのメンバーは死ななければならぬと言いたいのかネ?

Rー正にその通り。君は極秘にされている真実を定義した。勿論、私がメーソンである事はご存知だ。そうでしょう? 宜しい。 私は君に大きな秘密を明かそう。彼等はこの秘密を高級階級のメーソンに明かす約束をしながら、25階級でも、33階級でも、93階級でも、又その他の儀典上の高級階級のメーソンにも明かしていないのだ。従って私がこの秘密を知っているのは、メーソンとしてではなく、《彼等》の中の一人として、知っている事は明らかだ。

Gーその秘密とは何なのか?

Rーメーソン組織は皆、共産主義革命の勝利の爲のあらゆる必須条件を手に入れ、これを創造しようと勤めている。これは明白なメーソン組織の目的であり、全てこれは色々な口実の下に行われているが、彼等は常に彼等の三角形のスローガン(註=自由・平等・友愛)の後ろに隠れている。わかるかネ? しかし共産主義革命が、階級としての全ブルジョアの抹殺、全てのブルジョア的政治指導者の肉体的抹殺を義務と考えている以上、メーソンの秘密は、メーソン組織の自殺、有力メーソンの肉体的自殺だと云う事になる。メーソンに用意されているこのような結末は、この秘密を一層深く隠す為に、他の装飾的秘密で包込んで、極秘にしておかなければならない。この事は、勿論、君には分るだろう。若し君が別の革命に遭遇した時、メーソンが革命家の手で死ななければならぬ事が分った時、メーソンの顔に現れる驚愕と狼狽に注意を向けるチャンスを見逃さないで欲しい。革命の為にメーソンの犠牲が評価を受けるよう等、どうして予期できよう? そんな光景を見ると、おかしく死ぬそうだ(日本共産党又はマルクス主義信者又はそれを許す人達(リベラリズム)は、此の人を死んでいるのをおかしく考える事が出来る狂った精神の持主の思想[マルクス共産主義]を共鳴している。教育勅語を否定する思想の持主は悪魔に魂を売った人達である!忍)。

Gーそれでもなお君はブルジョアの持っている生れながらの寓蒙を否定するのか?

Rー私がこれを否定するのは、階級としてのブルジョアにおいてであるが、若干の分野では否定しない。精神病院があるからちいって、それは皆が気狂いだという証明にはならぬ。メーソン組織は、これ又精神病院だが、それは自発的な同意によるものだ。ところで、話を続けよう。革命は勝利を得て、権力を奪取した。今や初めての講話問題が取り上げられ、党内で初めての意見の不一致が起る。党には権力の座に坐った連合勢力が参加している。モスクワで起ったブレスト・リトフスク講和の支持者と反対者との間の闘争に関する周知の事実を説明する事は省き、既に当時明らかとなっており、トロツキーの反対派だと呼ばれていた事実だけに触れる事にする。これは、その一部は既に精算されており、他の人は自分の順番を待っていた連中の事で、彼等は皆講和締結に反対していた。この講和は誤謬であり、インターナショナル革命に対するレーニンの無意識的裏切りであった。ベルサイユでの講和会議に、次いで国際連盟に、更に同盟国の力によって軍備を整え、強化された赤衛軍を伴ってドイツ国内に現れたポリシェビキの姿を想像して見たまえ。ソ連はドイツ革命に武器を取って参加すべきだった。ヨーロッパの新しい地図が出現すべきだった。ところがレーニンは権力に酔い、スターリンの援助の下に、資源を持っているにも拘らず、自分の意志を固執した。スターリンはその頃党内のロシア民族主義者らによって支持された権力の果実を味わっていた。《1国社会主義》つまりナショナル共産主義が現れ、それはスターリン時代に絶頂に達した。当然、闘争が起った。しかしそれはソ連国家を滅ぼさぬような形式と範囲内に留まっていた。反対派はこれを闘争中も厳重に守った。この闘争は今日まで続いている。これが我々の破滅の原因でもあった。しかし闘争は、我々が権力に参加する名誉を毀損せぬように行われたが、残酷、無慈悲なものであった。トロツキーは自分の友人達の援助を受けて、ドラ・カプラン(註、ユダヤ女性の社会革命党員)によるレーニン暗殺を企てた。(1918年8月)トロツキーの命令によって、ブリュームキンは大使ミルバッフを殺した。スピルドノウが社会革命党員と一緒に準備した陰謀は、トロツキーと打ち合せたものだった。全てこれらの仕事でトロツキーと関係を持っていた人は、俗称オレイリというリストアニア系ユダヤ人ローゼンブリュウムであった事は、全く疑いない事である。彼は優秀な英国スパイとして有名であった。実際において、彼は《彼等》の一人であった。彼が選ばれたのは、英国諜報員として有名であり、事件が暴露した時は、全ての殺人と陰謀の責任が、トロツキーや我々にでなく、英国に帰せられるからであった。そしてその通りになった。内乱の後は、我々はもはや殺人とか陰謀の手を借りる必要が無くなった。トロツキーが赤衛軍を組織し、我々の手中に本当の力が存在したからである。しかし、それまでは、赤衛軍を組織し、我々の手中に本当の力が存在したからである。しかし、それまでは、赤衛軍は白衛軍の圧迫の下に退却し続け、ロシア共和国の全領土はモスクワ県の境まで縮小していた。ところが、ここでまるで”魔法の杖”の合図の一振りでもするように、我々は勝ち始める。これは何故だと思う? 魔法か、それとも偶然か? 言っておきたい事は、トロツキーが赤衛軍の統帥者となった時、彼は既に権力奪取の為、あらゆる勢力を結集していた。連続的勝利のお蔭で、彼の威信と力は当然巨大にならなければならなかった。今では白衛軍に打勝つ事が出来た。この官製の歴史は真実だと思うかネ? また装備の劣った、軍紀のない赤衛軍が突如として勝ち始めたのだと思うかネ?

Gーでは我々は誰のお蔭で成功したのか?

Rー90%まで《彼等》のお蔭だよ。白衛軍は本質的に民主主義者であった事を忘れてはならない。彼等はメンシェビキや昔の自由主義政党の生残りと一緒だった。この連中の中に《彼等》は、いつも、意識的、無意識的に、自分達の諜報員を配していた。トロツキーが使命を受取った時、全てこの手先達は、”ソ連政府の中のあるポストに就かせる”という約束を餌にして、「白衛軍を組織的に裏切れ」と命令された。マイスキーはその中の一人で、例外として約束されたポストに後日ついているが、それもスターリンが彼の忠誠を確信した後の事である。この職場放棄(サボタージュ)が無能な馬鹿者だった白衛軍の将軍に対する同盟国側からの援助削除を相待って、彼等を相次ぐ敗戦に追込んだのである。ついにウィルソンは有名な「14箇条」案を提出した。この案の出現は、白衛軍の反ソ戦闘の息の根に完全に止めを刺してしまうのに、充分であった。内乱によって、トロツキーはレーニンの後継者としての地位を強めた。疑いなく、そうであった。旧い革命家は名誉ある死を遂げる事が出来た。例えカプランの狙撃の後、レーニンが生残っていても、既に彼は殺される事は避けられなかった。この事は秘密決定の過程で宣告されていた。
 
 

●レーニンは暗殺された

Gートロツキーfがレーニンを始末したのか? これは我々の裁判にとって、興味有る問題だ。レーニンの医師は誰だったか? レビン(註=医師団陰謀事件の被告)か?

Rートロツキーが? 恐らく彼は参加していたろう。少なくともこの事を知っていた事は疑いはない。しかし、この事を知っていたのが誰かと云うことは技術的に見て、全く重要な事ではない。 《彼等》は必要な場所にはどこにでも侵入する可能性を十分に持っている。

Gーいずれにしろ、レーニンの殺害は、最大の重要性を持つ問題だ。次の裁判の特別審理にかけなければならぬ。ラコフスキー、仮に君がこの仕事の仲間だったら、どう思う? 君がこの会談でうまく話せなくても、医師として技術的説明が出来る事は明らかだが・・・。

Rーそんな詮索をする事は、君に勧めたくない。この問題はそっとしておいてくれたまえ。これはスターリン自身にとっても充分に危険だ。君は好きなように宣伝を広める事が出来るが、《彼等》は最強力な宣伝力を持っている。又誰が利益を得るかという事に関しても質問を用意している。その宣伝によって、皆はレーニンの殺害者はスターリンだと見る。この公式はレビン或はその他の人々を苦しめて得た自白よりも。最強力なものとなる。
Gー君は何を言いたいのか?

Rー私が言いたい事は、殺人者を決定する場合、誰がこれで利益を得るかを確認するという古典的、不変の規則があると云う事である。レーニンの殺害に関して、これに利害関係を持っている者は、レーニンの後継者スターリンだ。この事を考えて見たまえ。これ以上の詮索はしないで欲しい。それは私を脇道にそらせ、話が終りまで出来なくなる。

Gー結構だ、続けたまえ。しかし君には既に分っているが・・・。

Rートロツキーがレーニンから権力を相続しなかったとしても、これは全体の計画の中の人間の犯したミスではなかった。これは全く明らかな事だ。レーニンが病気の時、トロツキーは権力の全ての糸を手中にしていた。その権力はレーニンに交替するには十分過ぎる程であった。スターリンに死を宣告する措置も講じられていた。トロツキーが独裁者になるには、”スターリンに反対したレーニンの手紙をトロツキーが公表すれば、十分であった。この手紙は、その時既にレーニンの地位にあったスターリンっを精算する為、クループスカヤが夫から取上げていたものである。しかし馬鹿々々しい事情が全て我々の可能性を失わせてしまった。トロツキーが思いがけなく病気にかかり、レーニンが死んだ決定的瞬間に、何らかの手段に出る事が出来なかったのである。それが数ヶ月続いた。彼はあらゆる点で優越していたにも拘らず、障碍となったのは、我々の組織が、つまり個人的中央集権制であった事だった。トロツキーは、ずっと以前から、その使命と実現の為に養成された人物であったし、この様な人物は即席で作り出せるものではない。我々の内の誰も、ジノビエフ(註、ユダヤ名、ヒルシュ・アップフェルバォム)でさえ、この為の準備と素質は持っていなかった。しかも、トロツキーは、自分が除かれる事を恐れて、仲間の誰をも援助しようとしなかった。従ってレーニンの死後、我々がスターリンに対決した時、我々は既に中央委員会で敗北する事を覚悟していた。我々に必要な事は、決定を修正し、スターリンと同盟を結び、スターリン本人以上にスターリン主義者になり、積極性を発揮しながら、同時に職場怠慢(サボタージュ)を行う事であった。爾余の事は君が知っている通り。我々は何の妨害を受ける事はなく、我々の地下闘争を続けたが、それは結局スターリンの為になってしまった。彼は未曾有の天才的警察能力を発揮した。その上、スターリンは民族的隔世遺伝に憑かれていたが、それは初歩的マルクス主義によって汚毒されていなかった。彼は自分の汎ロシア主義を強調し、我々が抹殺しなければならなかった階級を復興させた。即ち我々が属しているインターナショナル的共産主義者の敵、ナショナル共産主義者階級を復興させた。彼はインターナショナルをソ連の利益に従属させ、自分をソ連の主人公と考えている(レーニンが行ったわるい政策の一つは ロシア革命後の婦人国有化政策を上げねばなるまい。これはどういうことかというと、レーニンは「家庭は利己主義の砦である」といって、生殖作用の成熟した年齢より42歳までの女は男に対して肉の欲求を拒むことが出来ない、而して生まれた子供は家庭の手をわずらわさず国家が引き取って養育するというものである。其の結果、重婚・強姦・近親相姦が増大し、青少年にわるい影響を与え、強盗・殺人が激増した。スターリンはそれを撤廃した。それについてのラコフスキーの言葉は表現されていない。因みに中川八洋氏によれば、先の防衛次官「を批判した社会党議員福島瑞穂氏は、『結婚と家族』の中でこのレーニンの家族の全面廃止は素晴しいと称賛し、強姦犯人(レーニン)を誉めていたという矛盾している事が気付かない!忍)。もし我々が歴史上で相似点を発見しようとすれば、ボナパルチズムを指示しなければならぬ。しかしスターリン型の人物を歴史で発見しようとしても、彼の歴史的相似者は発見出来ない。多分ジョセフ・フーシェとナポレオンの性格を結合すれば、その様な相似を見付ける事が出来るかも知れぬ。ナポレオンから軍服、軍人の位階、王冠、その他スターリンに興味の無い様なものを除去して、フーシェとナポレオンを結合すると、スターリンは革命の殺害者であり、革命には奉仕せず、革命を自分の為に利用している。ナポレオンが自己をフランスと同一化した如く、スターリンは最古のロシア帝国主義を代表している。彼は貴族主義を創造した。それは軍部的でなければ、官僚主義的、警察的貴族主義である。

Gー結構だ。ラコフスキー。君がここにいるのは、トロッキズムの宣伝の爲じゃない。何か具体的な事が言えないのか?

Rー勿論、言おう。しかし、君が《彼等》に関する、例え皮相的な概念であっても、自分で構成出来る時点に到達してからの事だ。《彼等》とは君は現実に、実践上で出会わなければならないだろう。君にとってよりも、私にとって、遥かに大切な事は、根拠が薄弱だと思われない事だ。これは勿論、君は分るだろう。

Gー宜しい。君の歴史の話を最短くしてくれたまえ。

Rー我々の誤謬は年毎に酷くなっていく。それは《彼等》が革命を更に躍進させる為に用意した事を、直ちに実行する事を遷延しているからである。ベルサイユ講和は、その計画を察知出来ぬ全ての国の政治家、経済学者には不可解であるが、革命にとって最も決定的な前提であった。
 
 

●ベルサイユ講和は革命を準備した

Rーベルサイユの賠償と経済的制限は、個々の国にとっては、決して利益とはならなかった。その甚だしい不合理性は、いち早く戦勝国の優れた経済学者には分っていた。フランスだけで、、フランスの全財産の総計以上の賠償を、全フランスをサハラ砂漠に変えてしまっても、払わなければならぬ金額以上を要求した。最悪い事は、ドイツに、その国全部を、一切の生産を含めて与えても、その支払い能力を何倍も凌駕する債務を支払わせる決定であった。そしてこの荒廃がどんな形で現れたか? ドイツにおける消費財の減少、飢餓と、輸入国における失業である。輸入が無くなった為、ドイツでは失業が起った。両側から飢餓と失業が起った。全てこれはベルサイユ講和の第一の結果であった。この条約は革命的だったか、どうか?更により大きな事が行われた。国際的規模での制御が確立した。これが革命にとって何を意味するか、その国の気候、自然資源、支配人や労働者の技術的養成の程度等を頭から無視して、国家消費に必要なもの一切を、豊富に生産させる結果、不合理な無政府状態が発生した事である。肥沃な土壌や特殊な気候がないのを、又鉱物や石油その他がないのを補填する為に、いつも貧乏国はより多く働かなければならなかった。これは、粗悪な土壌から生れる損失や、こうした手段で補填する必要があるその他諸の補償をする為に、過大な労働力を使用しなければならなかったと云う事である。生産設備を例にとって見よう。私は深入りしないが、労働日を平等にするという抽象的原則に基づいて、国際連盟が規定した労働日の統制は、事実上は、生産、交換並びに経済的不平等を設定する為の、金融インターナショナルの不変の制度の原理であった。何故なら、ここでは、十分な生産を保障するという労働目的等はどうでもよくなっているからである。その結果、生産は不十分となり、その結果、自然的に豊かな経済を持ち、経済的に発達している先進諸国からの輸入で、生産を補充しなければならなかった。次いで米国で景気がよくなると、米国はその莫大な生産を金と幾らでも出せる金券で交換した。生産が無政府状態になった上に、この同じ時期に未曾有の金融混乱が現れた。《彼等》は援助するという口実で、これを利用し、別の混乱を起した。即ち公定通貨(現金)のインフレに対して、彼等自身の銭ークレジット・マネーつまり贋の銭の何百倍ものインフレを持ってしたのである。色々の国で平価切下げが如何に組織的に始ったか、覚えているだろう。ドイツに於ける貨幣価値の破滅、異常な結果、記録的失業を伴った米国に於ける恐慌、欧米で3千万人以上の失業者。果してベルサイユ講和条約と国際連盟は、革命の為の条件を作り出さなかっただろうか?

Gーそれは何の企図からでもなく、偶然に起り得た事だ。革命と共産主義の理論的結論に屈服している。更に革命と共産主義は、スペインとドイツで勝利を得たファシズムと対立していると言うが、その理由を君は私に証明出来ないではないか。君はまだ何か言いたい事があるのか?

Rー私が君に言いたい事は、《彼等》と彼等の目的を認めない場合に限って、君は正しいと云う事だ。しかし君は、彼等が存在している事、彼等が目的を持っている事、更にソ連では全権力がスターリンの手中にある事を忘れてはならぬ。

Gー私は、この事は何の関係もないと思う。

Rーそれは君がそれを望まないからだ。君には有り余る程の演繹能力と判断力がある。繰返して言うが、我々にとっては、スターリンは共産主義者ではなく、ボナパルチストだ。
Gーそれがどうしたと云うのだ?

Rー世界に於ける共産主義革命の勝利の為に、我々がベルサイユで創造した偉大な前提、君も見ている如く、巨大な実在に変った前提が、スターリン的ボナパチズムに奉仕する事は、我々の望まぬ事である。これは君に分っているだろう? もしトロツキーがソ連の独裁者になっていたら、一切は変っていたろう。それは《彼等》が国際共産主義の指導者になっていたであろうと云う事である。

Gーしかし、トロツキーの共産主義にも、スターリンの共産主義にも、ファシズムは反対である事は、明らかである。君が《彼等》に帰属している権力がそんなに強力なものなら、どうして彼等はこの事を回避出来なかったのか?
 
 

●金融インターナショナルはヒトラーを指示した

Rーそれは正に《彼等》がヒトラーに勝利の可能性を与えたからである。

Gー君は既に不合理の範囲からさえ逸脱している。

Rー文化が欠除している時には、不合理と奇蹟が混在する。私の云う事を聞き給え。私は既に反対派の敗北を認めている。《彼等》は結局、スターリンを陰謀で除去する事は出来ないと納得したので、その歴史的経験から、彼等が皇帝(ツアリ)に対して行った事を、スターリンに対して再現する決意が浮んで来たのである。ところが、我々が克服出来ない唯一の障碍があった。それは全ヨーロッパに侵略国家が一つもないと云う事だった。どの国も地理的に都合の良い位置にないし、ロシアを攻撃するに足る強力な軍隊を持っていなかった。従ってこのような国がない以上、これを創造する必要があった。ドイツだけが大きな人口と、ソ連攻撃の為に至便な位置にあったし、スターリンを撃破する力があった。君自身分っている通り、ワイマール共和国は、政治的にも、経済的にも、侵略者として造られたものではない。反対にそれは侵略されるのに好都合だった。ところが飢えたドイツの地平線上にヒトラーの流星が閃いた。注意深い双眼は彼を注視した。世界は彼の電光的抬頭の証人となった。これが全て我々の仕業であった等とは、言わない。彼の躍進は障碍無く続いた。しかしそれはベルサイユが造った革命的、共産主義的経済の結果であった。ベルサイユが考えていた事は、ヒトラーの勝利の為の前提を作る事でなかった。ベルサイユは共産主義革命を準備する為に、ドイツにプロレタリア、飢餓、失業を作り出す事を志向したのだった。しかし、ソ連の頭上には、インターナショナルを支配しているスターリンが立っている。そしてこのインターナショナルは、ドイツがボナパルチズムから解放される事を希望しなかった結果、失敗した。しかし全てこれらの条件は何故かドイツ賠償問題のドーズ・ヤング案にそのまま持ち越され、ソ連では反対派が生長し、勝利を得る事を期待したのである。最もそれは実現しなかったが、革命の準備はその結果を生む筈であった。ドイツに於ける経済条件はプロレタリアを革命運動に駆り立てる筈だったが、スターリンの罪で、社会主義的国際革命は阻止される事になり、ドイツのプロレタリアは国家社会主義的革命に包含された。これには反対意見もあるが、いずれにせよ、社会主義革命はドイツでは決して行われる筈もなく、それが勝利を得る筈もなかった。しかしこれが全部ではなかった。トロツキストと社会主義者は、階級的差別を理解している、準備された大衆を、我々の指令に基づいて、分断する必要があった。我々はこれを了解していた。ところがこれ以上の事が必要だったのだ。ナチス党は成長し始めたものの、十分な金融資金を持っていなかった1929年、《彼等》はドイツに自分の大使を派遣した。私はその人の名前を知っている。彼はワールブルグ家の一人である。ヒトラーとの直接交渉で、彼等はナチス党に資金援助する事に同意した。そして党は2年後、ウォール街から送られた数百万米ドルと、党維持費と、ヒトラーに権力を与えた選挙資金の為に、ヒャルマール・シャハトを介してドイツ金融家から数百万マルクを受取った。全てこれは《彼等》が発送したドルとマルクで行われたのである。

Gー君の意見によると、完全な共産主義の実現を望んでいる人々が、初めての共産主義を滅ぼす事を誓っているドイツを武装している事になる。これが君に信じられる以上、これは金融家にとって論理的意味を持つ事になる。

Rー君はスターリンのポナパルチズムを又忘れている。フランス革命を圧殺し、その力を奪ったナポレオンに反対して対立したのが、ルイ18世、ウェリントン、メッテルニッヒ等の客観的革命家達であった事を記憶しているだろう。厳密なスターリンの教義によれば、彼等は22カラットの金である。帝国主義諸国に対する植民地に関するスターリンの命題を君は暗記している筈だ。それによると、アフガニスタンやエジプトの王達は、大英帝国に反対して戦っている客観的共産主義という事になる。だとしたら、ヒトラーは貴族的《皇帝コバ1世》に反対して戦っている以上、どうしてヒトラーが客観的共産主義者になれぬのか? 成長していく軍事力を持っているヒトラーは存続し、第三帝国の国境を拡大し、更にスターリンは攻撃し、完全に滅ぼす為の十分な力と可能性を蓄積している。あのベルサイユの狼どもも、今はその唸り声を暫く潜めているが共通性が君には観察出来ない? これは再びチャンス到来か、それとも偶然なのであろうか? 皇帝が蒙った敗北が我々に皇帝を打倒する機会を与えた1917年の様に、ヒトラーはソ連を奪取するだろう。同じ様にスターリンの敗北は、スターリンを片づける我々を助ける事になろう。再び世界革命の時が訪れる。現在、民主主義諸国は眠り込んでいる(現在の日本もこの状態に入っている。更に姦淫が盛んに行われて[写真集で沢山商売して、家族の問題を真剣に考える事を出来ない状態になっている]、動物レベルの感情まで陥れている。!忍)。これは、内乱時代と同じ様に、トロツキーが権力を握った時、大変化を起す助けとなる。ヒトラーは西から攻撃するだろう。しかし彼の将軍達は叛乱を起し、ヒトラーを精算する。さてなぜヒトラーが客観的共産主義者でないか、言って欲しい。イエスかノーか?

Gーお伽話や奇蹟を信じないんだ。

Rーよろしい。《彼等》が、既に達成したものは今後も全て達成できる事を君が信じるならば1年以内にソ連への襲撃と、スターリンの精算を目の当りに見る覚悟をしておくがいい。これが奇蹟か、或は偶然と思うかネ? ならばこれを経験するほぞを固めておくといい。君は、私の話が皆今の所単なる仮説であるとして、本当に信じる事を拒否するのか? しかし私の話の中で証拠になるものを発見したら、その時は君はこの方向に向って行動を始めるだろうよ(悪魔ダビデの甘言と煽動!忍)。

Gーよかろう。仮説を具体的に話し合うよ。君はどう思う?

Rー君自身、私達の間で得られた意見の一致には留意している。この時点では、私達はソ連を攻撃する事には何の関心も持っていない。というのは、スターリンが没落すれば、共産主義が滅亡する懼れがあるからである。ソ連は形式的なものではあるが、其の存在は私達には関心がある。ソ連の存在は、我々がソ連の争奪戦に勝ち、これを真の共産主義に変える事が出来るという自信を与えてくれるのである(今、現在はソ連は崩壊しているが、中国は崩壊していない。政府指導部は、マルクス主義そのものは放棄していない。マルクス主義の本質は、革命理論の戦略理論である事を忘れてはならない!忍)。私は、これによって現段階を君の為に、全く正確に定義したと思っている。

Gーよろしい。その決定は・・・。

Rー何よりもまず、我々が信じなければならぬ事は、ヒトラーが我々を攻撃する潜在能力を持ってはならぬと云う事だ。

Gー《彼等》がヒトラーをヒューラーに仕立てた。従って《彼等》はヒトラーに対して権力を持っており、又ヒトラーは《彼等》に服従する義務があると、君が主張するならばだ。

Rー急いではしょっているので、私の説は十分に正確でなかったし、君も私の云う事をよく理解していない。《彼等》がヒトラーに資金援助をしたのは、本当であっても、彼等がヒトラーに自分の存在と目的を明かしたと云う事ではない。ワールブルグの大使は偽名を使っており、ヒトラーは彼の所属する民族については察知していない。彼は誰の代表であるのか偽っていた。彼はウォール街の金融グループを代表しているとだけヒトラーに云っている。このグループは、フランスに脅威を与える目的で、ナチス運動に融資する事に関心を持っている。何故なら、フランス政府は米国に恐慌を挑発するような金融政策を行っているからだ、とね。

Gーヒトラーはこれを信じたかネ?

Rーそいつは知らない。しかしこの説明を彼が信じようと、信じまいと、それは重要な事ではない。我々の目的は戦争を挑発する事にある。ヒトラーは戦争なのだ。今度は分るネ?

Gーつまり、ソ連と民主主義国の間に、ヒトラーを脅かす、力のある同盟を組織する以外に、ヒトラーを阻止する別の解決方法はないと云う事になる。ヒトラーは世界の全ての国を一斉攻撃する事は出来ないと思う。最も蓋然的な事は、其の国々を各個に攻撃してくる事である。

Rー君は単純な決定、私に言わせれば反革命的決定しか思い浮べる事が出来ないのか?

Gーソ連に対する戦争を回避する事がか?

Rー君の言葉を半分に縮めて、《戦争回避》とだけ言っておこう。これは正に反革命的思想ではないか? 偶像レーニンや偉大な革命戦略家達を模倣する真の革命家は皆、常に戦争を希望しなければならぬ。戦争ほど、革命の勝利を間近にするのに効果的なものは他に何もあり得ない。これは君達こそが伝導する義務があるマルクス・レーニン主義(日本共産党が神だと思っている!忍)の理論(ドグマ)である。ところで、スターリン的ナショナル共産主義、ボナパルチズムの一種は、最も純血な共産主義者(国際共産主義者[国連]!忍)の知性を盲目にする程の力を持っている爲、彼等はスターリンが陥ちいった転化即ち国家が革命に従属するのではなく、革命が国家に従属する事を見落している(即ち、永遠に革命を行わなければならないと云っている。将に地獄図を表している悪魔の甘言である!忍)。こう言ったほうが最正しいだろう。

Gー君はスターリンを憎む余り、目が見えなくなり、自分自身で矛盾した事を言っている。君はソ連に対する攻撃は考えてはいけないという点では、一致しているじゃないか?

Rーそれでは、なぜソ連に対する戦争は必然なのか?

Gー一体ヒトラーはどの国に力を振向けようとしているのか? ソ連を攻撃しようとしている事は明らかだ。彼は自分の演説でもこれを明言している。これ以上の証明ではないではないか?
 
 

●独ソ戦争は不可避ではない

Rー君達、クレムリンの人々がヒトラーの対ソ攻撃は全く決り切った異論のない事だと考えるなら、それでは何の為にスペインで内乱を挑発しているのか? これは純然たる革命的理由によって行われているものだと言わないで欲しい。スターリンには、マルクス理論を実践に適用する能力はない(国際的に革命を行う能力はないと言っている!忍)。仮にスペインに何かの革命的情況があったとしても、優秀な革命勢力を浪費してまで、犠牲にする必要はない。スペインはソ連から一番遠い国であり、従って最も初歩的な戦略的考え方からしてもそれらの勢力の浪費は許されるべき筈がない(これは、中国の共産主義者にも当てはまり、それ故に日本国が一番狙われているのである。その徳川家康の戦略である外側の堀を今、埋めているのです。日本で数少ない親日であるトルコと台湾が、又マグニチュード6くらいの地震が起きているのです。そして、インドネシアとマレーシアにIMFによって通貨危機が起きているし、東ティモール国のインドネシアの内乱を起させているのです。それにより「神の法」(イスラム教)を無くす努力しているのです。これらの国々は、日本を一番理解している数少ない親日国家なのです!忍)。スターリンは、紛争期に、ソビエト的スペイン共和国に軍事援助をどうして与える事が出来たのだろうか? しかしこれは正しかった。というのは我々には重要な戦略的立場があった。資本主義国間の対立した影響力の衝突である。彼等の間に戦争を挑発する事は可能であったかも知れぬ。しかしこの事を正当化する事は、理論的には出来ても、実践的には出来ないと私は思っている。民主主義国とファッショ国家との間に戦争が無かった事は、既に知っている。ところで私が申上げたい事は、スターリンが、資本家達がお互同士戦うような戦争を挑発する口実を作る事が出来ると考えているならば、どうして彼は、自分がこれを実行出来なくても、他人でも同じ目的を達成出来るという事を、理論上で認めないのかと云う事だ。

Gー1つの仮説が存在している事を前提として君の論拠に同意する。

Rーという事は、私達の間に第二の協定が出来たと云う事になる。第一はソ連に対する
戦争はあり得ぬ事、第二は、ブルジョア国間の戦争を挑発する事が、有利だという事だ。
Gー同意見だ。これは君個人の意見か、それとも《彼等》の意見か?

Rー私はこれを自分の意見として言っている。私にはそんな権能はないし、《彼等》とも無関係だ。しかしこの2点では、我々はクレムリンの見解とも一致していると、主張出来る。
Gーこれは極めて重要だ。だからこの重要性を基礎づけなくてはならぬ。ところで、君の結論と《彼等》もこれを主張しているという君の確信は、何を根拠にしているのか、それが聞ければ嬉しいがーー。

Rー私に、彼等の図式を全部、完全に説明する時間があれば、その時は君に彼等の主張を伝える事が出来るが、現時点では三つの理由だけしか言えない。

Gーどんな理由か?
 
 

●ドイツの経済復興

Rー第一の理由、もう説明している。無教育で、幼稚な人間ではあるが、ヒトラーは、彼の生れつきの直感力で、シャハトの技術的意見に反して、極めて危険な経済制度を復興した。彼は経済理論では無知であり、又ソ連で我々がやった様に、私的資本と国際資本を抹殺する為に、必然に従ったまでであるが、彼は物理的貨幣だけでなく、金融貨幣をも発行する特権を自分で握ったのである。彼は、かって誰も入手した事のない偽造機械を奪い、自分の国の利益の爲、これを活動させた。彼は我々を凌駕した。何故なら、我々はロシアで私的資本を滅ぼしたが、これを粗暴な国家資本主義に代替してしまったからである。ドイツのそれは前革命的デマゴギーの必然の結果生れた非常に貴重な勝利であった。ここで私は君に比較の為二つの事実を提案しているのである。ヒトラーは好運な人間だったと云える。彼は黄金は殆ど持っていなかった。従って彼は黄金を蓄積しようとしなかった。彼は技術設備と独逸(ドイツ)の莫大な労働意欲によってのみ銭を保証出来た。技術的可能性と労働力、これが彼の黄金の蓄積であった。これは全く反革命的なものである。ご覧の様に、彼はまるで魔法の様に、700万人の技術者、労働者の失業を一掃してしまった。
Gーそれは高度の再軍備のお陰だ。

Rー何が君の再軍備を可能にしているのか? ヒトラーは、彼を取巻いているブルジョア経済学者が皆忠告したにも拘らず、これを成し遂げた。だとすれば、もし戦争の脅威がなければ、彼は平和的生産にもこの制度に感染させ、更に民族的独立経済時代即ち共和国連合を誘発したら、彼はこの制度を何に作り変える事が出来たであろうか? 君はこれを想像出来るのか? 若し出来れば、彼の反革命的機能を想像して欲しい。危険は今なお除かれてはいない。なぜなら我々にとって幸運な事にヒトラーは、その制度を経験論的に復興した。この制度は何か昔の理論からの結論ではない。又その制度は科学的に公式化されてはいなかった(人間の心は、10つの層があり、自由に選択出来る機能がある。悪の心もある事である。それ故に、社会科学[人間が行動する社会扱う]の中で、全てを公式通りに動くという考えは明らかに、「嘘」を言っているのです。此の考えが唯物論的考えなのです。只、現実の傾向を推し量る事は出来るのです。其の傾向に向わせる力の存在はあるのです(マスコミ等)。そこに善悪の判断能力が必要としているのです!忍)。これを知性的、演繹的過程に基づいて思考したのではなく、又その教説を公式化する科学的根拠を持っていたわけでもない。しかし結論が公式化されれば、その結果、今はまだ隠れている危険性が、現実化する事になる。これは極めて重要な事である。これはナチズムの一切の外面的苛烈な要素よりも遥かに重要である。我々の宣伝ではこの事を攻撃してはならない。何故なら理論的論争をすれば、我々の側からこの決定的、経済的教理の公式化、組織化を誘発しかねないからである。決定は唯1つ戦争である。

Gーそして第2の理由は?
 
 

●民族主義の抬頭

Rーテルミドール(註、フランス革命暦の熱月、反動期)の反革命が我がソ連革命で勝利を得たのは、これはかってのロシア民族主義が存在していたお蔭だ。この民族主義がなくては、ボナパルチズムは不可能だったろう。民族主義が皇帝(ツァリ)の個人の中でやっと生れたばかりのロシアで、ポナパルチズムが発生した以上、西欧の完全に発達した民族主義の中では、共産主義はどんな障碍に出会う事だろう。? マルクスは革命の成功という点では間違っていた。マルクス主義が勝ったのは、工業国ではなく、極めて少数のプロレタリアがいたロシアである。我々が成功した色々の理由の他に、次の様な事実がある。ロシアには真の民族主義(ナショナリズム)はなかった。ところが、他国ではそれが絶頂に達していた。民族主義が、ファシズムの法外な力のお蔭で、どんなに復興していったか、又どんなに伝染し易いか、君には分っている。スターリンにとって有益であるだけでなく、民主主義を根絶する為にも、ヨーロッパ戦争が必要である。

Gーラコフスキー、君は一つは経済的理由を、今一つは政治的理由を全て上げているが、ところで第三の理由は?
 
 

●キリスト教は共産主義(革命、大量虐殺)の敵である(人類にとって味方である)

Rーこれは容易だ。もう一つの理由とは、宗教である(革命を起させる為に反宗教立場に立っている!忍)。生きているキリスト教を絞殺さない間は、共産主義は勝利者にはなれない。歴史は我々に明らかに教えている。永久革命は、キリスト教内部に最初の分裂を作り出す事で、自分の部分的勝利を得る為に、17世紀を必要とした(日本人はこれを、ルター宗教革命を指していると考えているけれど、間違いで急進派のカルヴィン派のプロテタントを指している。そして、聖書を改悪している〈大天使様の霊言を消滅している。代表は『トビト書』である〉。これは、確かにカトリック教会のローマ教皇の悪弊があったのは認めるけれど、それはルター[合体霊ミカエル大王]によって批判されたけれど、悪魔ダビデは其の宗教改革を利用して『聖書』を改悪し、大天使様の霊言を消滅に計ったのである。ルター様は、晩年ユダヤ教の悪魔の法である「タルモード」を批判している事は、日本では余り通じていない。カトリック教会の批判はあるけれど!忍)。本質上、キリスト教は我々の唯一の真の敵である。何故ならブルジョア国家におけるあらゆる経済的、政治的現象は、キリスト教の結果である。キリスト教は個人を心の制御する事によって、中立的なソ連や無神論敵諸国を圧殺し、その革命計画を抹殺する力を持っている(それ故に、イルミナティ・マルクス共産主義者はしつこく宗教批判を行っている。大した事でもない事を大きな罪でもあるように咎めて、生活をさせないようにしている。そして最と大きな罪人を許している!忍)。これがロシアで見られる。ロシアに於いては、我々は指導的大衆の中で優位を占めている精神的ニヒリズムの建設拠点を獲得してはいるものの、それにも拘らず、このニヒリズムは依然としてキリスト教的なのである。この障碍を我々はマルクス主義の下において20年間も除去出来ずにいる(裏返して考えてみると、この反省を立って、キリスト教徒に向って更に残酷な支配を考えている!忍)。正直の所、スターリンは宗教に於いては、ボナパルチズムは実行していない。我々自身も彼が行った以上の事は出来なかったろうし、同じ様な事をしていたであろう。もしスターリンがナポレオンの様に、キリスト教のルピコンを敢て渡っていたら、彼の民族主義と反革命的権力は千倍も強くなっていたに違いない。付言しておくが、もしそんな事になったら、この様な酷い差異は、例えそれが一時的、客観的性質のものであっても、スターリンと我々の協力を不可能にしていたであろう。この事は今我々にとっては明白である。

Gー君は三つの基本点を規定した。これを基づいて計画を立てる事が出来ると思う(当時は、第二次世界大戦を起し、そのどさくれに共産主義革命を起す計画を立てる意味!忍)。此の点、現時点では、私は君と同意見だ。しかし、警告しておくが、君がここで話した人々、組織、事実に対しては疑問がある。さて計画の主要路線について、話を続けよう。
Rーそう。これについて話す時が来た。但し条件がある。それは自分の責任で話すと云う事だ。私が自分の述べた理由に対して責任を持つと云う事は、《彼等》もそう理解しているという意味である。しかしあからさまに言うと、《彼等》は、三つの目的をより効果的に達成する為に、別の計画を実行するかもしれない(これが、冷戦の構造の両立て主義である!忍)。これは全然違った計画となるかも知れぬ。それを記憶して於いて貰いたい。
Gーよかろう。覚えておこう。続けて下さい。

Rー要約して言う。独逸の軍事力が建設され、それがソ連を強化しているが、軍事力建設の目的が今のところない以上、今や新たに目的が生れてくる。即ち戦線で侵攻を惹起し、ヒトラーの侵攻を東にでなく、西に向けさせるのである。
 
 

●独ソは同盟せよ

Gー全くその通りだ。どうしてこれを達成するかという実践計画を君は考えていたのか?
Rー私はこの為の時間を、ルビャンカに居た時、十分持っていた。これを熟考した。それはこうだ。私達は今一致しているが、仮に我々にとっての共通点を発見する事が困難となっても、或は又万事順調に運んだとしても、何れにせよ、ヒトラーとスターリンの間にある同一性を如何にして発見するかという問題が生れてくる。

Gーそれはその通りだろうが、それは皆出来そうもない話だ。君もそう思うだろう。

Rーしかし、君が考えてる程、そんなに不可能ではない。実際上で、この問題の解決を不可能にするものは、この問題が弁証法的に主観的対立を内包している場合に限られる。更にこの様な場合でも、我々は、キリスト教の形而上学者の《道徳的不可能》を超越する(ジンテーゼ)が可能であり、又必要だと考えている(要するに反道徳的・悪魔的生きろと言っている!忍)。

Gー君は又々理論を弄びはじめている。

Rー私は知性的規律から見て、これは私にとって重要な事なのだ。文化の高い人々は具体的結論には、綜合を介してアプローチする事を選ぶものだ。その逆ではない。ヒトラーとスターリンの間には共通点が見出される。彼等は違った人間だが、同一の根底を持っている。ヒチラーはある程度、病理学的にセンチメンタルである(それ故に、独逸は核兵器を作っても、人の死を見る事が嫌なので、落さなかったに対し、アメリカは日本を落した!忍)のに対して、スターリンは正常(に残酷だ、正常的に考えれば非情な人間を共産主義的考えれば、正常になる!忍)だ。しかし両人ともエゴイストであり、理想主義者では決してない。ボナパルチスト即ち古典的帝国主義者だ。状態がこのようであれば、両人の間に共通点を発見する事は、既に困難ではない。一人の女帝と一人のプロシア王の間の共通点が証明され、可能である以上、彼等の間の共通点が発見されない事はない。

Gーラコフスキー、君はしょうのない人だ。

Rーまさか、君にはこれが察知出来ないのか? もしポーランドがエカテリーナとフリードリッヒつまりロシア女帝と独逸王の同盟の鍵であるなら、どうしてそのポーランドがヒトラーとスターリンの共通の地盤を形成する為の要素となる事が出来ないのか? ヒトラーとスターリンは、ポーランドにおいて、帝政(ツアリズム)、ボリシェビズム、ナチズムの歴史的路線と同じ様に、一致する事が出来る。我々の路線は、又《彼等》の路線でもある。ポーランドはキリスト教国、しかもカトリック教国だ。

Gーそれでこのような三角形の一致から何が生れるというのかネ?

Rー共通の地盤が有る以上、協定の可能性も生れてくる。

Gーヒトラーとスターリンの間にか? 馬鹿々々しい。不可能だ。

Rー政治には不合理も、不可能もない。

Gーじゃ、いいだろう。ヒトラーとスターリンがポーランドに侵攻するという仮説を許そう。

Rーちょっと待って。侵攻は、戦争ないし平和の条件においてのみ成立つ。これは二者択一だ。君はこれを認めなければならぬ。

Gーよろしい。それでどうなるのか?

Rーヒトラー軍に比較して弱い軍隊と空軍を持っている英仏が、ヒトラーとスターリンの同盟を侵攻出来ると考えるか?

Gーそれは勿論困難だ。すこぶる困難だ。しかし、もし米国が・・・。

Rー米国の事は暫く触れずにおこう。 ヒトラーとスターリンがポーランドに侵攻しても、ヨーロッパでは戦争を誘発する事はないという点で、君は私と同意見じゃないか?

Gー君の論拠は論理的だ。そう、それは不可能と思われる。

Rーこの場合、そのような侵攻や戦争は無益だ。侵攻や戦争をしてもブルジョア国家の全般的滅亡を誘発する事は出来ないからだ。ソ連に対するヒトラーの脅威は、ポーランド分割後も残る事になる。何故なら理論上独ソは同じ様に強化していくからである。実践上はヒトラーがソ連以上に強化する。というのは、我々は強大になる為の領土も、原料も不必要なのに、ヒトラーにはそれが必要だからである。

Gーその見解は正しい。私はそれ以外の解決はないと思う。

Rー否、それがあるのだ。

Gーどんな解決か?

Rー民主主義諸国は攻撃しなければならない。しかし侵略者を攻撃してはならぬ。

Gー君の言っている事は、全くナンセンスだ。どうして攻撃したり、しなかったり、同時に出来る? こんな事は不可能だ。
 
 

●英仏はヒトラーを攻撃する

Rーそう思うかネ? 落着いて。 侵略者は二人いるんじゃないかネ? 侵略者が二人だから、攻撃してはならぬと、我々は一致したのではないか? よろしい。しかし、二人の内の一人を攻撃するのであれば、それを何が妨害するだろうか?

Gーそれはどういう事かネ?

Rー簡単さ。民主主義国が宣戦するのは一人の侵略者に対してだけで、それはヒトラーではなくてはならぬと云う事だ。

Gーそりゃ、そうかも知れないが、その仮説には根拠がない。

Rーそう、仮説だ。だが根拠がある。考えて見たまえ。敵国連合と戦争しなくてはならぬ国はそれぞれ、彼等双方を各個撃破する事を、主要な戦略的目的とするだろう。この原則は証明を必要としない程周知の事である。従ってこのような条件を作り出す事に障碍があってはならぬ事は、同意見だろう。ヒトラーに攻撃が加えられた場合でも、スターリンはこれを悲しいとは思わぬだろう。この問題はもう解決していると思う。そうではないかネ? このような関係は地理的にも戦略的にも理由づけられる。英仏がどんなに馬鹿であっても、又独ソ両国の1つが中立維持を望み、他方が孤立する事になっても、何れにせよ彼等にとって恐るべき敵であるのに、この両国に同時攻撃をかける用意があるとしても、彼等は何処で、又どの方面からソ連を攻撃できるだろうか? ヒトラーに比較すると、空では彼等はずっと弱い。私が述べたこれらの要点は皆、秘密でもなく、周知の事だ。お分りのように、これは皆かなり要約されている。

Gー君の論拠は、紛争が4ヶ国に拡がる場合には、論理的であるが、彼等は4ヶ国でなく、それ以上である。それに中立はこの様な規模の場合は、全く容易な事ではない。

Rーそれは疑いない。一連の国が参加しても、力の相互関係には変化は生じない。これを勘案して見ると、仮に他の、或は全ヨーロッパの国が巻込まれた場合でも、近影は保持される事が分る。更に重要な事は、戦争で英仏側に参加するこれらの国のどの国でも。英仏の指導力を奪う事は出来ないと云う事である。その結果、彼等をソ連攻撃から引止めている原因は、依然としてその意義を保有する事になる。

Gー君は米国の事を忘れている。
 
 

●米国は先制攻撃はしない。

Rー私はこの事を忘れていない。それは、直ぐに分る事だ。我々は、現在我々にとって興味有る予備プログラムにおける米国の機能の分析にのみ限定している。そこで申上げたい事は、米国は英仏を使嗾してヒトラーとスターリンを同時攻撃させる事は出来ないと云う事である。もしこれを成功させる為には、米国自身、最初から戦争に加わざるを得ない。しかしこれは不可能だ。何故ならかって米国は戦争に巻込まれた事は無く、攻撃されない限り、攻撃する事はしていない。勿論、米国の支配者だって、有利な時には、攻撃を挑発する事はあり得る。これは信じて欲しい。挑発が失敗し、敵がこれに乗らない時に、彼等は侵略を考え出す事も出来る。彼等は勝つと計算していた最初の対スペイン国際戦争で、《彼等》は勝つと計算していた最初の対スペイン国際戦争で、《彼等》は侵略を考えた。1914年には挑発は成功した。勿論、挑発があったか、それともなかったか、技術的に色々問題があるが、絶対的な規則がある。警告無しの不意の攻撃は常に挑発されたものであると云う事だ。私は現在次の様に考えている。即ち、私がどんな時でも是認しているこの素晴しい米国の技術は一つの条件の下に行われている(挑発が素晴しいと考える事自体が平和の心を根ざしていない!忍)。つまり、米国に対して侵略が行われる時期は、攻撃される米国にとっても必要な、相応しい時期だと云う事である。この事は、彼等に武器が用意される時と云う事である。果して、この様な”時”が今存在しているであろうか? それが無い事は、全く明らかである。米国には現在、武装した兵員は10万人以下で、空軍は弱い。持っているのは、印象的な海軍だけである(第二次世界大戦前の話)。しかしこればっかりの兵力では米国は、同盟国にソ連攻撃を納得させる事はとても出来ない。何故なら英仏が優越しているのは海でだけだからである。これは、勿論、君も同意見であろう。この面から力の相対的均衡に変りのない事は、既に私は証明している。

Gー同意見だ。技術的本質の解明を又お願いしたい。

Rーポーランド侵攻に関してスターリンとヒトラーの利益が一致すれば、この目的の同一性の具体化、即ち2重攻撃に関する条約締結に一切が帰結する事は、お分りだろう。

Gー君はこれを容易だと思うかネ?
 
 

●ポーランドは独ソのスケープ・ゴートだ

Rー正直な所、そう思わない。ここで我々に必要なのは、スターリン以上の経験豊富な外交だ。この為にはスターリンが首を斬った人間が必要だ。彼は今ルビャンカで腐っている。かってはリトビノフ(註、ポーランド系ユダヤ人、本名メール・ゲノホ・モイセーヴィッチ・ワラッハ)は、彼の人種がいつもヒトラーとの交渉の障碍となっていたが、ある程度の困難はあっても利用する事が出来た。しかし今となっては彼はもう期待の持てない人間であり、パニック的な恐怖心で打ちひしがれている。彼はスターリンに対してよりも、モトラフに対して最動物的恐怖を感じている。彼の全ての能力は今では彼がトロッキストであった事を忘れる事に向けられている。若し彼がヒトラーとの親近な関係を樹立する必要があるという話を聞いて、彼がこの任務を引受けたとしても、その結果は自分のトロッキズムを自分自身に証明する事になってしまう。この任務を遂げられる人物は見あたらない。何れにせよ、その人物は純血のロシア人でなくてはならない。私なら指導部に自分の援助を申出る。現地点では、交渉する人に対しては、この交渉は隠し立てせず誠意を持ってしなくてはならぬが、極秘裏に行うよう提案したい。色々偏見はあっても、ヒトラーを騙す事の出来るものは、誠実だけだ。

Gー私は又君の逆説的な説明が分らない。
 
 

●ヒトラーを騙せ

Rー勘弁してくれたまえ。しかしこれは簡単な事だ。私がこんな事を止むなく、云っているのは、ジンテーゼがあるからだ。ヒトラーとは、具体的な、緊急の問題に触れる事によって、純粋な遊戯をしなくてはならぬと言いたかったのだ。此の遊戯は、ヒトラーに二つの戦線で戦争をさせようとしてこれを挑発する為に行われているものでは無い事を、まず第一に彼に約束し、証明する事だ。我々の現在の計画によれば、我々の主力は英仏が攻撃してくる場合に供え保有しておかなければならない。スターリンは迎合的な態度をとり、ヒトラーが必要とするもの全てを、例えば石油をヒトラーに提供しなければならない。これが今の時点で私がとりあえず思いついている事だ。これを同じ様な性質の何千という問題がその決定の為に発生するだろう。これらの決定は、我々が欲している事は、ポーランドの一部の、それも我々の必要とする部分だけを占領する事なのだと、実践上においてヒトラーに納得させるように行わなければならぬ。我々が只この一事だけをもっぱら追求する事で、彼は我々の誠意に欺かれる。

Gーだが、この場合でも瞞すことを予期するのかネ?

Rー君に2、3分、時間を与えるから我々がヒトラーを瞞す事が何であるのか、発見したまえ。しかし何よりも私が強調したい事は、又君がチェックしなくてはならぬ事は、私が言った計画は当然の、しかも理論的なものだと云う事である。そして私は、もしファッショとブルジョアの両陣営を衝突させる事に成功すれば、資本主義諸国がお互同士殺し合う事が、この計画によって達成出来ると思っている。繰返して言うが、この計画は論理的であり、当を得たものである。君には既に分っているとおり、ここには神秘的、超常的ファクターからの干渉はない。簡単に言えば、この計画を実現するには、《彼等》とその力の存在は証明されていないのに、これを証明する事に時間を費やす事は、愚かな事だと考えているのではないか? そうだろう。

Gー君の言う通りだ。

Rー私には正直に言って欲しい。君はまさか《彼等》の干渉に気が付かぬわけではないだろう? 私が君に色々話したのは、《彼等》の干渉が現にあり、決定的な事だという事で、君に助力する爲だった。従って計画の論理と当然性はいわば表面上だけの事だ。君は実際に《彼等》に会っていないのか?

Gー正直に言って、会っていない。

Rー私の計画の論理と当然性は表面上だけの事だ。もしヒトラーとスターリンがお互同士敗北したら、それは論理的であり、当然の事であると云えるだろう。もし民主主義国がこの様な目的を追求したら、これは民主主義国にとっては極めて簡単、容易なものとなろう。ヒトラーにスターリンを攻撃させる事になれば、彼等にとっては、十分であろう。独逸が勝つかも知れぬなどと言わないで欲しい。若しロシアの距離、ヒトラーの脅威に対するスターリンとその親衛隊の恐怖、彼等の犠牲に対する復讐が、独逸の軍事力を涸渇させる為に十分でない場合には、スターリンがその力を喪っているのが分った時点で、民主主義国は、賢明かつ整然とスターリンに対して、何の障碍もなく援助を開始する。そして双方の軍がその力を完全に無くしてしまうまで、援助し続けるであろう。実際上、これは容易であり、自然であり、論理的である。勿論、これらの目的が民主主義国によって提示され、これを民主主義の信奉者達が信じるならばの話だがーー。しかい、これらの目的は前提に過ぎない。実在しているものは、唯一の目的ーー即ち共産主義の勝利である。それも自らの意志を民主主義国に押付けようと努力しているモスクワでなく、ニューヨークである。ウォール街の資本主義インターナショナルである。彼以外に、この様な明瞭かつ絶対的矛盾に、ヨーロッパを服従させる力を持つ者は誰もない。彼以外にこの様な完全な自殺を保障出来る勢力は存在しない。唯一の力ー金銭である。金銭、これは力、唯一の力である。

Gー私は君とは隠し事はしない。ラコフスキー、君の異常な才能は認める。君は素晴しい弁証法、説得力、繊細性を持っている。君にこれが不足していても、君はその想像力を発揮して、君の美しい織物を拡大し、輝かしい、明白な展望を作り出す。これは私の心に情熱を喚起する。しかし、それでも私にとっては不十分だ。私はここで君が話したことを前提としても、なお君に問題を提起する。

Rー私は君に回答をするが、但し条件付きだ。それは私がこれから言うことに何も附加したり、結論を出さぬ事だ。

Gー約束する。《彼等》は独ソ戦争を妨害したがっている。これは資本家達にとって有利であり、彼等の見地からは論理的であると主張しているのだネ? 私の説明は明確かネ?
Rーそう、全く其の通りだ。

Gーしかし、独逸に軍備を許し、拡張させているのが、現時点での現実だ。これは事実だ。君の説明によれば、これはトロッキストの計画で想定ずみであったが、我々の《粛清》のお陰で駄目になり、その目的もなくなったと云う事は、私は既に知っている。新しい情勢が生じた為、君は”ヒトラーとスターリンが条約に調印して、ポーランドを分割せよ”と助言している。又分割が行われようと行われまいと、ヒトラーはソ連を攻撃しないという保証を、どうして我々は持つ事が出来るかと云う事である。

Rーそれは保障出来ない。

Gーそれじゃ何の為にこんな事を言うのか?

Rー性急にならないで、ソ連に対する大きな脅威は実在している。これは仮説でも、言葉だけの脅威でもない。これは事実であり、強制された事実である。しかし《彼等》は既にスターリンより優越している。この優越は否定出来ない。スターリンに提案されている事は、2者択一、選択の自由はあるが、これも完全な自由ではない。ヒトラーの攻撃は、スターリン自身の選択によって始る。《彼等》は戦争を起す為に、策を弄したりはしない。スターリンに行動の自由を与えるだけである、これが根本的な、決定的現実であるが、君のクレムリン的思考方法の結果、君はそれを忘れている。自我中心主義だ。

Gー選択の自由だって?

Rーもう一度説明しよう。しかし簡単に言う。即ちスターリンに対して攻撃するか、それともヨーロッパ資本主義国は自滅する。私はこの可能性に対して、君の注意を促したが、君が知っている如く、これは単なる理論的計画に過ぎない。もしスターリンが助かりたいなら、彼は私が話した案を採用する事を余儀なくされるだろう。この案は《彼等》によっても是認されている。

Gーもしスターリンがこれを拒否したら?

Rーそれは彼には不可能だ。独逸は強大となり、軍拡は続く。スターリンがこの大きな脅威に直面した時、彼に残された手段は何か? 彼の自己保存本能が彼を強制して、この案に服従させるだろう。

Gーつまり、この事件は《彼等》の命令によって発展しなければならぬと云う事になるのか?

Rーそうなるだろう。勿論、ソ連は今の所昔のままであるが、早晩これは起る。何かを予言し、提案する事は難しい事ではない。まして、これが有利であり、問題の本質を理解している人にとってなら、尚更容易である。我々の場合では、これはスターリンである。しかし、彼は自殺等とても考えたりはしない。所がこの予言がその人にとって不利な場合、その人に予言を信じさせ、行動させる事は遥かに困難だ。しかし民主主義国は行動しなければならぬ。私は真の情況の具体的光景を明らかにするまでは、説明しなかった。現段階では、君は独裁者だという、間違った考えを捨てて欲しい。何故なら仲裁者は《彼等》だ。

Gー《彼等》は第一案でも、第二案でも参加している。つまり我々は幽霊と関係を持たなければならぬと云う事かネ?

Rーまさか、事実が幻影だろうか? 国際情勢は特別なもの、異常なものではあるが、幽霊ではない。それは現実であり、非情に現実的なものだ。これは奇蹟ではない。ここには事前に規定された将来の政策がある。これが幽霊の仕業だと君は考えているのだろうか?

Gー考えて見よう。君の案が採用されたと仮定しよう。しかし我々には交渉を行う為に、具体的な個別者が必要ではないか?

Rー例えば?

Gー信任されている、或は全権を持った人物だ。

Rー何の為に? 只彼と知り会う満足の為か? 会話する満足の為か? この様な人物が現れても、君に信任状は出さないし、外交官の制服をつけて現れる事はないし、公文書も提示しない。何故ならその人物は《彼等》の顔だからだ。仮にその人が何か言ったり、勧誘したりしても、それは条約を意味するものでもないし、法律的効力を持つ物ではない事を覚えていて欲しい。これは1917年までのインターナショナルと同じで、又現在のそれとも同じ事である。無であり、同時に全である(如何に悪魔ダビデに操られたのか!忍)。仮にソ連が交渉しているのが、メーソン、或はスパイ組織、或はマケドニアのパルチザンであると想像したまえ。その様な交渉で文書協定や法律的協定があるだろうか? レーニンと独逸参謀本部の協定や、トロツキーと《彼等》の協定もこの様なものであった。この様な協定は、文書や調印なしでも達成される。これらの協定が履行される唯一の保証は、協定参加者にとってそれが有利であるという点にある。又この有利さをもたらす諸事情が履行されるところに保証がある。それが重要であるかどうかとは無関係に、協定の持つ現実性にある。

Gーこのような場合を君なら何から始めるか?

Rーベルリンと連絡を取ることによって、明日にでも始めたい。

Gーポーランド攻撃について協定する為に?

Rーいや、私ならそこからは始めない。私はまず譲歩する希望のある事を示威しておいて、スペインでの事を極めて婉曲に思い出しながら、民主主義国の中に幻惑感のある事を示唆する。これは勧奨の行為であり、その後で私はポーランドの事を仄めかす。お分りの様に、これは何も名誉を傷つけるものではない。しかし独逸の最高司令部やいわゆるビスマルク派にとっては十分なもので、彼等はヒトラーに何かの借定を提示するに違いない。

Gーそれで全部か?

Rー手初めとしてはこれで十分だ。これは既に大きな外交上の仕事だ。

Gー正直に言って、今日までのクレムリンの目的を考慮すれば、国際政策でこの様な急激な変更を献言する人がいるとは考えない。ラコフスキー、君自身が決心する必要のあるクレムリンの人物の立場に立って見て欲しい。私は君の発見、論拠、仮説、主張だけに基づいて、誰かを説得出来るとは思わない。私個人は君の話を聞いてから、君の説明、人格の強い影響を感じたが、それにも拘らず、独ソ条約が可能だという誘惑は、ちょっとも感じていない(当時、霊体の存在を信じない日本人の一部もそうであった。代表的な人は、平沼内閣総理大臣であり独ソ条約を結んだ時、「ヨーロッパは複雑怪奇で分らない」という迷言を残した!忍)。

Rー国際的事件が協力にそれを余儀なくさせる・・・。

Gーしかしそれでは貴重な時間の浪費となる。君が正当である事、君を信頼してもよいという証拠として私が提示出来る何か具体的な事を示して欲しい。でないと、私は対談を十分正確に検討しなくてはならなくなり、その情報はクレムリンの古記録になって、そこに保管される事になってしまう。

Rー誰かが最も公式的な口調で、非情に重要な人物と話合わなければならぬというだけでは不十分なのか?。

Gーそれが最も現実的だと、私には思われる。

Rーしかし誰と?

Gーこれは私の個人的意見だ。ラコフスキー、君は一連の金融家の名前をあげた。私の記憶している限り、シフの事だ。更にヒトラーと資金援助の別の仲介者の名前も上げた。又政治家や《彼等》に属しており、或は奉仕している高官もいる。何か実践的な事を始めるのに、我々にとって有利な誰かを、君は知っているか?

Rー私はそれが必要だとは思わぬ。考えても見たまえ。君は何について会談するのか? 恐らく私が話した計画についてか? 何の為に? 現在、《彼等》は何か措置を講じる必要に迫られてはいない。《彼等》の使命は、何もしない事にある。従って、どんな積極的行動に関する協定も、君は達成出来ないし、又これを要求する事も出来ない。よくよく考えて欲しい。

Gー例えそうであっても、私達の話合いの結果、何かの事実、それが無益であっても、事実がなくてはならぬ。つまり、誰が《彼等》に賦与している権力の存在を裏書出来る人間だ。

Rー無駄とは思うが、君の要求を満足させよう。先に申上げた通り誰が《彼等》に所属しているか、私個人は知らない。しかし彼等を当然知っている筈の人物から聞いて知っている。

Gー誰からだ?

Rートロツキーからだ。彼から私は聞いたのだが、《彼等》の一人はヴァルター・ラーテナウだ。彼はラッパロ後大変有名になった。彼こそ《彼等》の仲間の最後の、政治的、社会的地位を占めていた人物だ。ソ連に対する経済封鎖を破壊したのも彼だ。彼はライオネル・ロスチャイルドのような億万長者の富豪の一人であった。しかしそれにも拘らず、私は自信をもって彼の名をあげる事が出来る。更に仕事や性質から見て、《彼等》に属する別の人々の名前も上げる事は出来ると思うが、彼等が誰を統制(コントロール)しているのか、又彼等が誰に服従しているのかは、規定出来ない。

Gー数人の名前を上げてくれたまえ。

Rー機構としてはウォール街のクーン・ローブ銀行。この銀行に属しているのは、シフ・ワールブルグ、クーン・ローブ一家である。彼等は異なった名前で呼ばれている一家族である。彼等は皆婚姻関係にあるからだ。更にバルーフ、フランクフルター、アリトシューリ、コーヘン、バンジャミン、シュトラウス、シュテルンハルト、ブロム、ロスチャイルド、ルールド、ローゼンマン、リップマン、レーマン、ドレフュース、マンデリー、 モーゲンソウ、 イゼキエリ、 ラスキーといったところだが、これだけの名前で十分だと思う。もっと思い出そうと努力すれば、まだ沢山の名前が思い出されるかも知れない。繰返しておくが、彼等の内の誰が《彼等》に属しているかは知らないし、又彼等の内の誰かが《彼等》に属している等と滅多な事で確言したり出来ない。私は努めて責任を避けようとしているのだ。しかし提案の重要さに鑑みて、必要というので、私は名前を言った。《彼等》に属していない人々まで、《彼等》に属していると、私は言っているに違いない。勿論、その人物が《彼等》に属していようが、いまいが、彼から直接の回答を期待する事は不可能である。事実によってのみ回答出来る。これが不変の戦術である。《彼等》はこれを選択し、これによって彼等は《彼等》を信じさせるのである。例えば、もし君が外向的イニシアチブをとる危険を冒すなら、君は《彼等》に対し、個人的にアプローチする方法を利用する必要はない。必要な事は、思想の表現、不明であるが、一定の事実に基づく理性的な仮説を示す事に止める事である。その後は唯待つだけである。

Gー君が名前を言った人々を確認する為の名簿を現在の手許に持っていない。これを理解して欲しい。《彼等》は皆どこか遠方にいると思うのだが、どこだろうか?

Rー大部分は米国にいる。

Gー我々が行動を決意しても、これには時間がかかると思う。しかし事は至急を要する。それは我々にとってだけでなく、君にとってもそうだ。ラコフスキー。

Rー私にとっても?

Gーそう、君にとってもだ。君に対する裁判は間もなく行われる。我々がここで討論した一連の事は、クレムリンにとって興味があり、裁判が始る以前に、クレムリンはこの一切に関心を抱くに違いない。この予想は、冒険ではないと思う。君にとっては決定的な事だ。君がいち早く何か提案すれば、君個人の利益になると思う。最も大切な事は、君が言っている事が本当である事を証明し、これを数週間といわず、数日の内に実行する事だ。もし君がこれに成功すれば、君の生命保全に対しては、殆ど確実な約束を与える事が出来る。反対の場合、私は責任は持たない。
 
 

●ルーズベルトは金融インターナショナルの代表だ

Rー冒険をやって見よう。モスクワにジョジフ・E・デービスは来ていないのかネ? そう、米国の註ソ大使だ。

Gー彼はここにいると思う。彼は帰って来ている筈だ。

Rー唯例外的な状況の場合に限って、公式の仲介を利用する。この為に、私は原則を破る権利を与えられると思う。

Gーつまり、全てこの背後に米国政府が立っていると、我々は考え得ると言う事かネ?

Rー背後であっても、従属している。

Gールーズベルトか?

Rーどうして私がそれを知っている? 私が出来るのは結論を出すだけだ。君はいつも政治的スパイのマニアにとり憑かれている。君を満足させる為に、私は色々な事を考え出す事が出来る。君にその事件と正当性を信じさせる為には、十分過ぎる程の想像力、日時、真実を私は持っている。しかし、一般に周知の事実は正しいのではないか? 自分を反省したまえ。1929年10月24日の朝の事を思い出したまえ。この日が1917年10月よりも遥かに重要なものとして、革命史上に数えられる時が来るだろう。1929年10月24日にニューヨーク市場が崩壊し(株価が大暴落!忍)、いわゆる《不況》即ち真の革命が始ったのである。フーバー政府の4年間は革命的進歩の年である。1200万人?1500万人もの人々がストライキを起した。1933年2月には危機の最後の一撃によって、銀行が閉鎖した。《古典的米国》を打破する為に、資本がこの時成し遂げた以上のことを行う事は困難だ。最もこの資本は尚自らの工業的基礎を持っていたが、経済的関係では、ウォール街の奴隷だった。人間ないし動物社会に関しては、経済の涸渇が寄生主義の繁栄をもたらす事は周知の事だ。資本は大きな寄生虫である。しかしこの米国革命が追求した目的は、金銭を利用する権利を持っている人々の為に、金銭の権力を強化するだけでなく、それより遥かに大きなものに対する権利を獲得しようとしたのである。金銭の権力は政治的力であるが、かってはこれを間接的に利用していた。ところで今ではその権力は直接的な力に変形している。《彼等》は、この権利をある人物を介して持っていた。その人の名はフランクリン・ルーズベルトである。わかるかネ? 次の事んひ留意して欲しい。この1929年、米国革命の第1年目の2月にトロツキーはロシアに離れた。そして崩壊が10月に起っている。ヒトラーに対する融資は、同じ1929年に決定している。これは皆偶然の事件だと君は思うかネ? フーバー政治の4年間は、米国とソ連に対する権力の奪取の準備であった。米国では金融革命によって、ソ連では戦争とそれに引続いて起る筈の敗北によって・・・。君は《想像》に基づくこんな立派な正しい歴史を聞いた事があるかネ? このような大規模な計画を遂行する為には、米国に於ける最高権力を指導出来、又前もってこれらの力を組織し、指導出来るように準備されている人を必要とする事は、お分りでしょう。この様な人物がフランクリン・ルーズベルトとその妻エリナーであった。この両性の結合は単なる皮肉ではないと言わせて貰いたい。

Gールーズベルトは《彼等》の一人なのか?

Rー彼が《彼等》の一人か、或は単に《彼等》に服従しているのかは、知らない。君はこれ以上何が必要なのか? 彼は自分の使命を意識していたと思うが、脅迫の結果これを遂行することを余儀なくされたのか、或は支配していた彼等の一人であったのかは断言したくない。彼が自分の使命を遂行し、少なくとも彼に委託された一切の活動を確実に実現した事は、紛れも無いことである。これ以上の事は質問しないで欲しい。私はこれ以上の凍は知らない。

Gー仮に君がデービスと連絡を取る様に決定されたとすれば、どんな形式で君はこれを行うつもりか?

Rー第一に、君は《男爵》(ロスチャイルド)型の人物を選ばなければならない。彼は有益だ。ところで彼はなお生きているのかネ?

Gー知らない。

Rーよろしい。人物の選択は君の仕事だ。君の代表は、地味な人でなく、信頼の於ける、何よりも秘密反対派の人間として振舞わなくてはならない。又ナチズムに反対し同盟しているヨーロッパの民主主義国のお陰で、ソ連がどんな困った立場におかれているかについて、賢明に対話をしなければならぬ。これは潜在的帝国主義打倒の為、真の現代帝国主義即ち英仏における民主主義を防衛する事が必要な時には、植民地主義的帝国主義をやむなく支持している事を指摘する事である。問題は極めて強固な理論的根拠に基づいて、提起されなければならない。その後、行動を正当化する仮説を形成する事はとても容易になる。即ち第1に、ソ連も、米国も、ヨーロッパの帝国主義にとるかという問題に帰着しなくてはならない。つまりイデオロギー的にも、経済的にも、ロシアと米国は直接的或は間接的行動によって、ヨーロッパ帝国主義の打倒を希望しているが、米国はこれをより多く希望している。もしヨーロッパが新しい戦争で自分の力を失ったら、全ヨーロッパの力を失ったら、その日から英語で会話をする帝国は、その全重量を上げて、米国に政治的、経済的援助を求める事になる。これは不可避的だ。米国ブルジョアを不安がらず、左翼的陰謀の世界で君が聞いた事を分析してやる事だ。ここまで話が進んだら、2、3日休止してもいい。次の反応に気を付けながら、更に交渉を続ける必要がある。今度はヒトラーの第1計画を提起する。ここでは彼の侵略を指示する必要がある。勿論ヒトラーは侵略者であり、此の点疑いはあり得ない。この後で質問する。自分では望んでいない帝国主義者間の戦争を考慮にいれて、ソ連と米国はどんな共同行動を取るべきか? 回答は、中立である。ここではこれを論証しなければならぬ。即ち、中立ではあるが、それは一方からの希望に依存するものでなく、侵略者に依存するものである。中立が保証され得るのは、侵略者にとって不都合な場合に限る。この目的の為に正しい回答がある。それは他の帝国主義国に対して侵略者が攻撃をかける事である。ここから、帝国主義者達の間の衝突が、自然発生しない場合は、これを挑発する為の必要性と安全の為のモラルを表現する段取に移行する事は、極めて容易い事である。全てこれが理論的に採用されたら、その時初めて実践問題を話合う事が出来る。これはもう技術の問題である。これが大綱だ(これから下で著述する第二次世界大戦の大綱である。筑波大学中川教授は、ここまで行く過程の宗教の問題を関わっていない。だから主犯を見逃している。主犯は悪魔ダビデに操られたユダヤ金融財閥である事は事実である、他の人達は只動かされているだけである!忍)。

1、ヒトラーと我々の間でチェコスロバキア或はポーランドを分割する条約を締結(ポーランドの方がよい。[そうすれば、戦争が起きるからだ!忍])

2、ヒトラーはこれを受入れるだろう。もし彼がソ連と同盟して、領土奪取の為の冒険を支持出来るならば、民主主義国側は屈服するという安全な保証を彼は持つことになる。
 ヒトラーは彼等の脅威を信じる事は出来ないだろう。何故なら軍事的脅威で威かそうとする者自身が軍縮が実際に行われている事を、彼は知っているからである。

3、民主主義国はスターリンでなく、ヒトラーを攻撃するだろう。二人は侵略し分割した点では同罪であるが、戦略的、論理的理由からして彼等は、その力をまずヒトラーに向け、次いでスターリンに向ける事を余儀なくされる。
 

Gーしかし彼等は我々を騙す事はしないだろうか?

Rーなぜだ? スターリンはヒトラーを十分に援助する行動の自由を持っていないだろうか? 我々はヒトラーが資本家達と、最後の一人まで、最後の1ポンドまで戦争を持続していく可能性を、ヒトラーに与える事が出来ないだろうか? 資本家達は何を持って我々を攻撃出来る? 荒廃した西側諸国は国内の共産主義革命に対する闘争でかなり難儀する。この革命は場合によっては勝利を得る事も可能だ。

Gーしかし、もしヒトラーが軽く戦勝したら、ナポレオンのように、ソ連に反対して、全ヨーロッパを動員するのではないか?

Rーそれは不可能だ。君は米国の存在を忘れている。君は力の要因、しかも主要な要因を否定している。売国がスターリンを真似て、自分から進んで民主主義諸国を援助すると云う事は、果して不自然だろうか? もし誰かが、戦っている双方を援助する事によって《時計の針を逆転させる》行動を平衡させれば疑いもなく戦争は永久的に拡大していく事になる。
 

●日本の政策を認める

Gーところが日本は?
Rー日本には中国だけで充分ではないか? 中国に対しては、スターリンは不干渉を保証してやれば良い。日本人は自殺が大変好きだ。しかし、中国とソ連を同時に攻撃する危険を冒すほどではない。未だ何か矛盾があるか?
Gー否、若しこれが私に関わるものなら、私はやって見たいが、君は代表者がいると信じるかネ?
Rーそう、信じる。私はその代表と話す機会はなかったが、次の事を注目して欲しい。デービスの任命は1936年11月に一般に分った。ルーズベルトは彼を前から派遣する考えだった。従って予備行動を行っていたと推定しなければならぬ。人選や色々な任命上の公式手続きには2ヶ月以上もかかる事を知っている。彼の任命は8月に打ち合せが終っていた事は明らかである。所でその8月には何が起ったか? 8月にはジノビエフ、カーメネフ(註、ユダヤ名、ローゼンフェリド)が銃殺された。私は誓って言うが、彼の任命はスターリン政治に対する《彼等》の新しい干渉の為に決定されたのである。私はこれを確信している。次々と行われる粛清で、反対派が次々と倒れていくのを知って、彼は内心大きく動揺しながら旅立ったに違いない。彼はラデック(註、ポーランド系ユダヤ人、本名ゾベルゾーン)の裁判に傍聴していたか?
Gーいた。
Rー君は彼に会ったら、彼と話したまえ。彼はこれをもう何ヶ月も待っているのだ。
Gー今日で私達は対話を終らなければならぬ。しかし別れる前に、まだ知っておきたい事がある。全てこれが本当であり、成功を収めたとして、《彼等》は一定の条件を出すだろう。この条件が何か推察出来るかネ?
Rーそれは推察するのに困難ではない。第一の条件は共産主義者、即ち君達が《トロッキスト》と呼んでいる連中の処刑を中止する事。次に当然、私が既に話した、若手の勢力圏の設置を要求するだろう。その限界は形式的共産主義から分離する事になる筈である。これが主要な条件である。計画が出来上ったら、一時的な共同援助の為の相互協定と譲歩が行われる。君は例えば、パラドックスに満ちた現象を見る事になる。スターリンの敵全体がスターリンを援助する。いや、彼等は必ずしもプロレタリアではない。しかしプロのスパイでもない。社会のあらゆる階層の有力人物、上級社会の有力人物が現れ、スターリンの形式的共産主義者が、真正共産主義とまでいかなくとも、客観的共産主義にかわるや否や、スターリン主義者とその形式的共産主義を援助するであろう。私の云う事が分るかネ?。
Rー終りにする時間なら、私は只次の事を申上げておく。君の理解を助けになるかどうか。マルクス主義はヘーゲル主義であると云われている事は周知の事だ。これは通俗だ。ヘーゲルの観念論はバルフ・スピノザ(註、ポルトガル系ユダヤ人哲学者、1632?77年)の自然神秘主義を理解出来ない西側に対してこれを接種する為の応用手段として、広く普及しているだけである[マルクス主義とヘーゲル主義は違う。形而上(精神)の問題を唯物論に置換えたのがマルクスである。これが犯罪行為である事が、世界は通じていない。全く違う種類の内容である。要するに精神の存在を否定しているマルクスと一緒にして欲しくない。それは霊体の存在(聖霊、神の存在)を否定しているのである!忍]。《彼等》はスピノザの後継者なのである。いや、その反対かも知れない。スピノザ主義が《彼等》の中にいる。スピノザ主義(神の学問)は《彼等》独自の哲学(悪魔哲学)時代の同一変種に過ぎない。この哲学(悪魔学!忍)は以前に発生し、遥かに高い水準に立っている。いずれにしても、ヘーゲル主義者もスピノザ主義者も、双方ともこれを一時的、戦術的に採用しただけである[これは、悪魔の立場の言葉であって、本当は神に従ったスピノザ主義者とヘーゲル主義者が、高い水準の哲学であって、《彼等(悪魔ダビデ王)》は、同一変種に過ぎなく、只、「宇宙の法」を一時的戦術的に悪用しただけである!忍]。物質とは、矛盾を除去した結果、ジンテーゼが生れるというマルクスの発表したようなものではない。実際上これは反対の相互融合の結果であり、ジンテーゼはテーゼとアンチテーゼから得られるものだ。主観と客観の間の最終的調和として真実、真理が生れる。君にはこれがわからないかネ? モスクワ(北京!忍)には共産主義があり、ニューヨーク(ロンドン!忍)には資本主義がある。これはテーゼとアンチテーゼだ。これを検討して見たまえ。モスクワ(北京!忍)は主観的共産主義で、資本主義は客観的国家共産主義だ。ニューヨーク(ロンドン!忍)にとっては、資本主義は主観的で、共産主義は客観的である。人格化したジンテーゼ、真理とは金融インターナショナルであり、資本主義と共産主義が同一となっているものである。これが《彼等》だ。
 
 

●エピローグ

 周知の通り、スターリンはラコフスキーの忠告に従った。ヒトラーと条約を結んだ。そして第二次世界大戦も又、革命の利益だけに役立った。
 これらの政策変更の秘密はガブリエルと医師ランドフスキーとのその後の会談から理解出来る。以下がその一節である。
 ガブリエルは言った。

 『ラコフスキーとの会談を憶えているか? 彼は処刑されなかった事を
 知っているかい? 君は会談を皆よく知っている。だから同志スターリ
 ンがこの奇妙な計画を利用する方が賢明だと決心したのは、何も不思議
 はない。この計画には何のリスクもなく、反対にそれから大きな利益が
 得られる。君が記憶を更に新しくすれば、若干の問題を理解出来るだろ
 う。』

 『私は全てはっきり記憶しています。私はこの会談を2回も聞き、それ
 を記述して、訳した事を忘れないで下さい。ところでラコフスキーが《彼
 等(アニイ》と言った人々の事が分りましたか?』

 『君を信頼しているという証明の為、君に言うが、否である。《彼等》
 が誰であるかは、自信をもって言えないのだが、最近になって、ラコフ
 スキーの言った事が色々確認されている。例えば、ヒトラーをウォール
 街の銀行家達が資金援助したと云う事は、正しかった。その他の色々の
 事も正しかった。私が君と会っていないこの数ヶ月間、私はラコフスキ
 ーの証言と関連のある調査をした。私が個人をはっきりさせる事は出来
 なかったのは、本当だが、金融家、政治家、学者、はては聖職者に至る
 まで、それぞれ高位を占め、巨大な資材と権力を持ったグループは実在
 している。彼等の占めている地位と彼等の行動の結果から判断すると、
 彼等の思想の多くが、共産主義思想(共産主義思想はキリスト教から産
 れている!忍)と多分に共通点を持っている事が、奇妙だし、不可解に
 なる。勿論、特別の共産主義思想ともだよ。しかし、全てこれらの問題、
 その複雑性、動向、プロフィールには触れずにおくとしても、ラコフス
 キーの言う通り、彼等の行動、誤謬においても、スターリンを盲目的に
 模倣して、共産主義を建設しているのである。ラコフスキーの言った一
 切の事は、細部まで遂行されている。具体的な事となると何も掴めない
 が、又それに反対するものも何もない。反対に彼等は一切に対して、大
 きな注意を払っている。ジョジフ・デービス大使は慎重に、過去の裁判
 の事をほのめかしているが、それはラコフスキーが近い将来恩赦される
 のをほのめかすまで至っている。これは米国の世論に好影響を及すだっ
 てさ。3月裁判の時は大使をよく追跡した。彼はこの裁判に立会ってい
 た。我々は彼に特殊の技術者を同伴する事を許可しなかった。被告との
 相互連絡を防止する為である。彼は専門外交官でないので、技術の繊細
 な事は分らない。彼は被告達を眺めるよりほか仕方がないので、目配せ
 で何かの合図をしようと努めていた。彼はローゼンゴレツとラコフスキ
 ーを元気づけようとしていたのだと思う。デービスが裁判中、彼等に非
 情に関心を持っていた事、又彼はラコフスキーに対して、”メーソンの
 挨拶”の合図をしたと、ラコフスキーは後日確認している。
  なお奇妙な現象が他にもあったが、申上げる事は出来ない(未だ隠さ
 れている!忍)。3月2日夕方、ある強力なラジオ放送を通じての通信
 を受取った。「恩赦か、それともナチスによる脅威の増大か」。このラ
 ジオ通信はロンドンのソ連大使館の暗号電報であった。これが重大な警
 告であった事は当然である。』

 『その脅かしは現実化しなかったのですか?』

 『とんでもない。3月9日夕方に法廷は審理を開始した。そして3月1
 2日最高裁判所の討議が終った。その日、3月12日午前5時30分
 (1938年)ヒトラーは自分の機甲師団にオーストリア出撃を命令し
 たのである。勿論これは単なる軍事的散歩に過ぎなかった。だが、この
 事を事前に考慮に入れる充分な原因があったのであろうか? デービス
 の挨拶やラジオ通信、信号、判決と侵攻の一致、ヨーロッパの沈黙と
 云った事を、全てこれは偶然だと考えて、これを見送る程、我々は馬鹿
 だったのだろうか? 否、実際に我々は《彼等(アニイ)》を見ていな
 いが、彼等(悪魔ダビデ!忍)の声を聞き、彼等(悪魔ダビデ)の言葉
 を理解していたのである。』

ルースカャ・ジーズニ紙より
 
 

解説

 そもそも現代の世界政治はユダヤ問題[宗教問題の一つとして考えて欲しい。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は全て同じ神の宗教である。只互いに、自分の所が正統なる神である主張しているが、正統性はない。特にユダヤ教は、悪魔ダビデがアブラハムと契約した事から始っているので、悪魔ダビデに付きまとっているのです。漸く悪魔ダビデ自身は滅亡したが、その系統は生残っているのです。悪魔ダビデは、神(エホバ)に最も近き兄弟であったので、かなりの横暴があったのです。ユダヤの問題は、これが根本的な問題であるのです!忍]を抜きにして成立しない。民族主義(ナショナリズム)と国際主義(インターナショナリズム)はユダヤ問題に定位せずには、理解出来ない。事にスターリン時代のソ連の歴史はスターリン主義ー民族的社会主義とトロッキズムー国際的社会主義の対立に終始し、今では後者が完全に没落し、前者が支配的となっている。その結果、正統的マルクス主義者を自負しているトロッキスト、社会主義者達は、ソ連の現体制を反革命、反共的だと避難している[国際的だと考える人の方が狂信的である。ずうと革命を考えているから!忍]。上記のラコフスキー調書は、以下の事を念頭に入れておく必要がある。調書はいうまでもなく理論的解説ではない。それは被告の所信表明であり、当然あるべき理論的前提は、ユダヤ教の野望であり、事件の本質に関する分析である(この辺りの解説は、シホン長老の議定書に書かれている。高橋良典氏は、理論的前提がないと解説している事じたいが唯物論に入り込んでいる。宗教の歴史を調べれば、その辺りの理論的解説は沢山ある。その代表は、シホン長老の議定書である。高橋氏は、これを偽物と心に入っているから、理論的前提がないと答えているのです。これらの問題は、形而上の問題と精神的の善悪の問題であるから、「繊細の問題」として考えなければならない。霊体はこの世に存在しているから、これが唯物論との違いの前提であり、当然、善霊と悪霊は存在し、聖なる善霊が、神として君臨しているのです。霊体の存在を否定したならば、この証言の内容は一生理解できないでしょう!忍)。この証言の中で特徴的な事は、被告がマルクスのインターナショナル以外に、ニューヨークの金融界を根拠とするユダヤ金融インターナショナルが世界革命の陰謀を策動している事、しかもこれはマルクスも認めており、ロシア革命ではトロツキーを演じた事は、周知の事実であるが、ロシア革命、第一次世界大戦においてユダヤ金融資本が闇の帝王として活動した事は、注目に値する。この陰謀組織は決して表面には顕在化しない秘密のものであり、この調書の中では推測、示唆の域を脱していないが、今もなお活動をしていると断定している(只、親玉である異星人のダビデ・カンターレ子爵は、この宇宙の中では消滅されているから、その家来又は、ダビデと同盟している異星人と結託している可能性はある。何故ならば、ユダヤの神エホバは、日本に住んでいるから、イスラエル国家建設は出来ないから!忍)。では一体、闇の帝王は何を志向しているのか? ドストエフスキーは『手帖』の中で次の様に書いている。

 「ユダヤ人(ダビデ王愛着宗教人!忍)は一切のものを、ヨーロッパを、文明を、特に社会主義を支配している。・・・
 ・・・彼らは社会主義を宣伝しながら、相互に一致団結し、ヨーロッパの全てが滅び去った時、(ダビデ王愛着宗教人!忍)
 の銀行だけを残そうとする。やがて反キリストが到来し、混沌の上に君臨しよう」

 又第一インターナショナルでマルクスと対立したバクーニンは、

 「私は確信している。一方ではロスチャイルド家がマルクスの功績を評価しており、他方マルクスはロスチャイ
 ルド家に本能的な愛着と深い尊敬を感じている」

と、『国家性とアナーキー』において述べている。
 ヘーゲル哲学を換骨奪胎したマルクスもユダヤ人(ダビデ王愛着宗教人!忍)であり、世界的財閥ロスチャイルドもユダヤ人(ダビデ王愛着宗教人!忍)である。国際的社会主義のリーダーであったトロツキーもユダヤ人(ダビデ王愛着宗教人!忍)である。では、一体トロツキーの支配者は誰なのか? この調書では、只《彼等》とだけしか書いていない。しかしその覆面を脱いで《彼等》が我々の前にその正体を暴露する日は、そう遠くないであろう(首謀者は、暴露されたが、その同盟の異星人と家来全体は暴露されていない!忍)。
 こうした世界陰謀の謎をとく鍵は、イエス・キリストが荒野で40日40夜断食した時、彼の前に現われた悪魔の言葉ではないか。

 「悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、この世の全ての国々とその栄華とを見せて言った。
 『もしあなたが、ひれ伏して、わたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう』・・・」

  この悪魔こそ黄金の犢牛ーマモンの神(ダビデ・カンターレ子爵、牛頭大王、バール神、神エホバ天帝の双子の弟)である。資本主義インターナショナルーカピンテルンこそ、悪魔教の教団である(要するに天皇陛下が行われている神の農業儀式を神の儀式として認めるまで、ミカエル大王を、宇宙連合軍隊最高責任者として認めるまで戦いが続く。悪魔ダビデが何を行ったかは、フリーメーソンの歴史と共産主義の虐殺の歴史、牛頭天王の人殺しの歴史等、世界の残虐な歴史には全て関与しているのです。そしてユダヤの歴史を正しく伝わっていないのです!忍)。