コンピューター・システムの発展と共に、新たな犯罪者”ハッカー”
が登場。悪魔と手を結んだ現代の魔術師ともいえる彼等の戦慄すべき
実態に迫る!
1995年2月17日。その日、サンフランシスコの連邦裁判所は、ごった返す報道陣の波をさばききれず、大混乱に陥っていた。
CNN、ABC、CBS、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、AP通信、その他全米のありとあらゆるメディアがこの裁判所に殺到したのである。
無数の報道陣は、前日に逮捕された一人の男性ーー風采の上がらぬ31歳の内気な青年ーーの拘留尋問の取材の為、殺気だった雰囲気の中、押合いへし合いを繰返していた。
およそ世界中のコンピューターに興味を持つ者にとって(意味不明!忍)、この日、1つの伝説が終りを迎えようとしていた。
その伝説の主人公の名は、ケヴィン・ミニトック。FBIによって最重要指名手配犯とされたサイバー・テロリストである。
ミニトック逮捕を伝える「ニューヨーク・タイムズ」の一面の記事は、「史上最悪・最強のハッカー逮捕さる!」(左翼新聞!忍)の派手な大見出しの下に、「数十億ドルの企業秘密を盗出した狂気の天才」としてミトニックを糾弾していた(後で、記述するがミトニックの実刑犯罪は、最終的に「電話のただかけ」だけである。見出しの表現と如何に違うのか!忍)。
又、この夜のCBS「イブニング・ニュース」では特別番組が放送され、ダン・ラザーが「ミトニックはインターネットを通じて、2万件のクレジットカードのデータを盗出した罪で告発されている」と重々しく語り始めた。
更に「LAタイムズ」は、ミトニックが「国防省のスーパーコンピューターに潜り込み、あわや第三次世界大戦を引き起そうとした疑いがある」事をスクープとして大々的に報道した。
繰返し報道されるミトニックが犯したとされる容疑の数々に、全米の市民は震え上がった。たった一人のハッカーが、それ程までに恐ろしい犯罪を引き起せる事は、殆どの一般市民の想像の域を越えていたのである。
しかし、ネットワークの怪物は逮捕された。多くの人々はとりあえず胸をなでおろした。これで悪夢は終りを告げたーー。
だが、現実はそんなに甘くはない。それを今からお話ししよう。
一般メディアは、コンピューターを悪用して、様々な犯罪を犯す者達を称してハッカーと呼ぶ。元々ハッカーとは、コンピューターのハード、ソフト及びネットワークの専門的知識を持つ人々への尊称であった。
それがいつの間にか、コンピューター犯罪者の代名詞のようになってしまっている。
なぜ、そのような事になってしまったのかを少し語って見たい。その歴史を知る事により、現代ハッカーの恐ろしさが、より深く理解出来ると思うからである。
コンピューター技術の黎明期、ハッカーは常に不可能とされる技術の壁に挑み続ける人々でもあった。例えば、彼等は無償でソフトの不具合を解消したり、ネットワークのリンクを拡大したりといった作業に没頭していた。
彼等は、自らの知的好奇心を満たす為なら、時間も労力も厭わない。不可能とされた技術の壁が、偉大なハッカー達の無償の努力によって次々と打破られていったのである。その姿は、現代の魔術師と呼ぶに相応しい。
初期のハッカーの原動力になったのは、彼等が好んで口にする次の様な言葉に集約される。
「僕にはそれができるんだ!」
ずば抜けて旺盛な知的好奇心と自己顕示欲こそが、ハッカーと9なる必要最低条件であった。
ある意味で、それは非常に牧歌的な時代であった。コンピューターは一般社会から隔離され、大学や研究所といった一部の閉鎖的なネットワーク空間に閉じこめられていた。そして天才ハッカー達は、嬉々として彼等だけのネットワーク空間を飛回っていた。
しかし、そんな時代はいつしか終焉を迎えようとしていた(この牧歌的な生き方が天上界の生き方である。勿論、社会秩序を維持する規制が必要である。それは、あくまでも、家族を大切にする方向で考えなければならない!忍)。
コンピューターの将来性に気がついた一般社会が、ハッカーという魔術師の”遊び場”に踏込んで北のである。
ある日気がつくと、自由気ままに遊んでいた原っぱのあちこちに、勝手に立入禁止の立札が立てられ、鉄条網で囲まれるようになったのである。
魔術師達は憤慨した。
善くも悪くも、ハッカーは永遠の子供達である。大人の社会の利害や法律は自分達に関係ないと思い込んでいる。彼等は、自分達の遊び場にどかどかと入り込んできた権力者やビジネスマンを軽蔑し、あざ笑った。
「立入禁止の立札や鉄条網がなんだ!
そんな物直ぐに潜り抜けてやる!僕には
それが出来る魔法の杖があるんだ・・!」
そしてやがて、ハッカーという言葉が、法律を破る者と同義語となってしまったのである。
史上最悪のアッカーとして逮捕されたケヴィン・ミトニックもそんな(牧歌的な)人間の一人だった。
だが、彼は本当にサイバー空間に棲息する恐るべき魔術師だったのだろうか?
市民社会の安全と秩序を脅かす民衆の敵なのだろうか?
実態は少し異なるようだ。
少なくとも、少年時代のミトニックは、人付合いが下手な、内気でおとなしい少年であった。何処にでもいる平凡な少年ーー。
只一点、ミトニックが他の少年と違ったのは、ずば抜けて頭が良かったという、その一点だけである。
皮肉な事に、ミトニック自身は正規な高等教育を受けていない。10代の半ばからコンピューターに異常なまでの興味を持つようになったミトニックは、やがて高校のコンピューターを使って他校のネットワークに侵入を繰返し、ついには放校処分となってしまった。
この事から、ミトニックの名前は全米のハッカー仲間に広く知られるようになる。自由な時間を存分に使えるようになったミトニックは、絶対に侵入不可能とされる堅牢なセキュリティ・システムをやすやすと打破り、国家機密や企業秘密を満載したコンピューターにアクセスを繰返した。
但し、ミトニックはこの間、そこからは1セントの利益も手にしていない。ミトニック自身の言葉を借りれば、
「そこで何が行われているのか、覗いて見たかっただけなんだ」
と云うことである。知的好奇心と自己顕示欲を満足させたいーー。
ミトニックは、将に初期のハッカー像を代表する典型的な魔術師でしかなかったのである。
ミトニックに云わせれば、人類の知的財産を秘密の金庫にしまい込む政府や企業の連中こそ、最も重大な犯罪を犯している。真の正義は、我らハッカーの側にあるのだ、と。
しかし、コンピューター社会が急速に膨張する過程で、ハッカーの姿も又徐々に変貌を遂げていったのである。将に悪魔と手を結んだ魔術師が、登場し始めるのである。
ハッカーが引き起した事件が、一般メディアで報道されるようになったのは、恐らく1980年代以降の事であろう。
何故なら、それ以前に起きていたハッカー事件は、殆どの場合、誰も損害を被らないし、又ハッカーも利益を手にしない。せいぜい、ネットワークの保守管理責任者の面目がつぶれるぐらいの問題しか起きなかったからだ。
しかし、80年代以降、コンピューターが世界中のビジネスシーンの中核を担うようになってからは様相ががらりと変る。
従来の伝統的なハッキング行為から、ほんの僅かな一歩を踏出すだけで、ハッカーは巨額の利益を手にする事が出来るようになったからである。
ネットワークが国境を越えて拡大するにつれ、政府の国家機密を海外から盗出そうとするハッカー達が暗躍するようになる。
こうなると、もはや”ハッカーのちょっとしたイタズラ”で済まされる問題ではない。ましてや、闇から闇へと葬り去ることは出来ない。
政府はハッカー対策に本腰を入れるようになった。ハッカー狩りが始ったのである。
彼等が用いた作戦は、毒をもって毒を制するーー、である。
政府は優秀なハッカーを雇い入れ、ネットワーク・セキュリティのプロに仕立て上げていった。
こうしてハッカーVSハッカーの火花が散るような対決の時代が幕を開けたのである。
センセーショナルなミトニック逮捕ドラマの中で、一躍脚光を浴びる事となった若き日系アメリカ人がいる。
ツトム・シモムラーー。
テレビで、新聞で、シモムラの名前は繰返し登場し、サイバー探偵、セキュリティのプロとして正義のヒーロー扱いされていった。
実際、シモムラの執拗な追跡がなければミトニック逮捕される事はなかったろう。
しかし、シモムラがミトニック逮捕に協力するようになった経緯については、疑問が残る。
シモムラの語る所によると、自宅のコンピューターにミトニックからの「侮辱的な音声メッセージ」が届けられ、同時に幾つかの重要なファイルが盗まれた事が判明したので、個人的な名誉の問題としてミトニックを追いかけるようになったのだという。
だがどうやらこれは事実とは異なるようである。では、なぜシモムラはミトニック追跡という骨の折れる仕事を自ら買って出たのか。
そこに、意外な事実が浮び上がってきた。
シモムラはNSA(国家安全保障局)とセキュリティに関するアドバイザーとして雇用契約を結んでいたというのだ。と云う事は、シモムラはNSAの依頼を受けてミトニックを追跡していたと云う事になる。
この、新たに判明した新事実に、全米のコンピューター関係者は二重の衝撃を受けた。 まず第1の衝撃は、ミトニック逮捕劇がこれまで報道されているようなFBIの主導で行われたものではなく、実際には、より強大な力と組織を持つNSAが乗出していたという事実についてである。
そして第2の衝撃は、シモムラのような伝統的ハッカー(シモムラも過去にネットワーク犯罪の容疑者として起訴されかけた事がある)と思われていた人物が、いつの間にか国家権力と手を結んでいたという事実である。
もはや、ハッカーにとっての古き良き時代ーー天才的な頭脳を持つ(大人に”なれない子供”が、自由気儘にネットワーク空間を遊び回っていたかっての時代ーーは終りを告げた。
無邪気な魔術師に代わり、悪魔と結託した黒い魔術師が本格的に活動を開始したのである。
「もしもコンピューターがこの世に存在しなかったらーー」
という話の宣伝を見た事があるだろうか。例えば、スーパーマーケットの棚は空になり、書店では1冊の本も買えなくなるとCMの登場人物は訴える。
が、実際はそんな生やさしい話では済まされない。
電気・水道・ガスの供給から、交通・通信に至るまで、私達の個人的な生活は全てコンピューター・ネットワークの助けを借りなければ何一つ満足には行えない時代に入ってしまった。
又、あらゆる企業の経済活動から国家の行政・法執行・軍事に至るまで、全てがコンピューター・ネットワークによって支えられている。
こんな時代が来る事を予測した人間は一人も居ない。気が付けば、濁流の中に巻込まれていたようなものである。私達は、社会のネットワークがあらゆる物を飲込みながら突き進むのを、只あれよあれよと見ているしか無かったのである。。そして今や、誰もこの流れの外に飛出す事は不可能になりつつある。
そして今、ネットワーク社会を脅かす怪物と名指しされたハッカー達は、徹底的な弾圧を加えられている。
確かに、彼等にはそれをやってのけるだけの技術と知識がある。
しかし其の一方で、多数のハッカー達が、権力者として、華麗な転身を遂げている事も又事実である。あくまでも、セキュリティのプロとしての名目で。
だが、その名目をそのまま鵜呑みにしているコンピューター関係者は殆どいない。
例えば、あるハッカーグループが暴露した事実によると、シモムラはNSAの依頼を受けて、敵対国のコンピューター・システムに潜り込み、システム全体を無力化する凶悪なプログラムの開発に成功したと云われている。
その一つは、コンピューターの中央演算処理装置に凄まじい負荷のかかる演算処理を強制的に行わせ、高熱で演算回路を溶解させる
或は、ごく短時間にハードディスクへのアクセスを何万何千回と行わせ、メモリ全体をクラッシュさせる・・・。
勿論、シモムラは、これらの噂を全て否定している。
しかし、シモムラ程の優秀なハッカーがその気になりさえすれば、その程度のプログラムを開発する等ごく簡単な事である事は、疑いようもない事実なのである。
仮にシモムラがやらないとしても、別のハッカーが請負うだろう。それに見合う高額の報酬を呈示しさえすれば・・・。
そして、悪魔の誘いの手を断る頑迷なハッカーに対しては、徹底的な弾圧を加えればいい。無邪気なミトニックのように・・・。
一連の事件に対して、獄中にあるミトニックは多くを語ろうとしない。只、親しいジャーナリストに対しては、次のような言葉を漏しているという。
「ぼくは無垢の天使じゃない。それは認める。でも、ぼくは恐ろしい
悪魔でも凶悪な怪物でもないんだ。ぼくはただ、秘密のヴェールの向
う側で、何が行われているのかを知りたかっただけなんだ」
おそらく、ミトニックのような古典的なタイプのハッカーは、これから徐々に消えゆく運命にあるのだろう。彼等は利益を求めようとしない。求めるのは、知的好奇心と自由への欲求だけである。
その一方で、新しい魔術師達の暗躍は凄まじいものである。
彼等は多額の報酬を求め、依頼主がどんな存在であろうと、そのあらゆる要求に応える。全世界に張巡らされたネットワーク空間を自在に飛回り、闇の奥深くで仕事を片づける。
企業対企業、或は国家対国家の熾烈な戦いが、傭兵と化した魔術師達の手によって繰広げられている。
時には、権力対個人の戦いに、彼等の見えざる手が下される事もあるだろう。
この数年、アメリカでは反政府運動を標榜するグループの幹部が、次々にまさかと思うような罪状で逮捕され続けている。例えばクレジット詐欺、或は幼児ポルノ画像の蒐集等である。
そしてそれらの犯罪の証拠は、全て彼等のコンピューターの中にしまい込まれていた。それはあたかも、誰かが彼等のコンピューターに密かに潜り込み、でっち上げの証拠をそっと置いてきたとでも云うかのように・・・(もしこれが事実ならば、国家の犯罪行為である。それを行っているグループを探索する必要がある。そして、行政府に裁判を掛ける必要がある。これは、単なる国家の詐欺罪である!忍)。
彼等の手にかかれば、あなたを社会的に抹殺してしまう事等、いとも容易いだろう。私はコンピューター等持っていないからと云っても、それは何の気休めにもならない。
既に、現代ネットワークなくしては活動出来ない状況になっている。
銀行等の個人資産が消され、何億という借金だけが残る。あなたの存在を示す、全ての情報が抹消されてしまう。勿論、ガスも水道も電気も止められる。
そればかりか、あなたと口を聞いただけで、同じ様な目に遭うと様々なメディアを通じて告知され、誰も半径1m以内には近づこうともしない。
そうなったら、どこか山奥で自給自足の生活をするしかなくなるのである。
80年代〜90年代にかけて、コンピューター・ネットワークの急速な進化の先には(意味不明。自分は、急速な悪化と感じている。個々の企業が、独自の戦略で法人内ネットワーク(イントラネット)の通信手順(プロトコル)作れば、色々な種類の通信手順のお陰でこういうハッカーの問題は出てこない。今の問題は、ネットワークの下部の所に共通の開かれた通信手順であるから、ネットワーク分析機によって容易に知れ渡るのである。インタネットと言うのは、公に公表し、どんな種類の人にもアクセスを許すものしか公表してはいけない。インターネット内で信用取引する事自体が無意味である!忍)、人類のバラ色の未来が実現されるかのように喧伝されて来た
しかし、私達は今、一歩間違えれば、社会が暗黒の恐怖政治の時代に転落しかねない事を否応なく認識させられつつある。
WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)とは、インターネットの代名詞として語られる言葉であるが、直訳すれば「世界に張り巡らされた蜘蛛の巣」と云う意味である。
私達は、もう既に蜘蛛の巣に捕えられている。もがいてももがいても逃げられはしない。そしてこ9の蜘蛛の巣を、恐るべき毒蜘蛛が密やかに、そして自在に飛回っている事を、決して忘れてはならないだろう。